修復
まもなく、修理の方針が固まった。(正式の)書き物にしたかどうかは記憶にないが、思い出せばこんなことだったと思う。
・交換可能な機能部品は、全部交換する。
・分離分解できる部品は、全部取り外してザイグロで損傷を検査する。
・後部胴体は、思い切って大きく切り取って分離する。
・そのうえで、アライメント通りにセットし、T.O.に従って元通りにストリンガーや外板を取り付ける。
整備修理用の木組みの作業台があった。主翼や尾翼の下にそっくり入るような形状・高さのもので、その上に砂袋を置いて胴体とそれぞれの翼を乗せ、尾部は切り離した状態でアライメントの通りに位置関係を調整して置く。巻き尺と水準器だけの微妙な作業だったが、試みに測った他機のアライメントがかなりばらついていた。
どう判断したかは記憶にないが、戦時標準機とかロット番号(製造時期)とか、またフライングタイガーとか与圧なしのヒマラヤ越え、マッツ供与などといったC-46にまつわる特有の言葉を聞いたのもこの作業中ではなかったかと思う。作業は一冬を通して進めた。暖房のない薄暗いハンガーでの作業であった。
しかし、一方では、作業を進めながらも、私のどこかに満たされないものがあった。多分これでいいのだとは思いながら、これでは元に復したと言って見せるだけで、これで大丈夫だといえるのかなあと言う素朴な疑問(分かったうえで技術的に妥当と判断するのではなく、分からないことがあることを知りながら、残したままにする? ごまかし? いい加減?)に付きまとわれ、さりとてどうするという具体的な知恵もないという孤独な不安……。