【前回の記事を読む】兄の友人が溺れ…訃報を伝えに「おつかい」に行った小学3年生
第1章 まとめ
そもそも「おつかい」とは何でしょう? 私が持っている辞書には“おつかい”という言葉は載っていません。「つかい」を引いてみると、漢字は「使い・遣い」とあり、第一義的には「人の用事を足すために、目的の場所へ行くこと。また、その人。」という意味があるようです。
それも、「国王の遣い」などのように、目上の人の用を足すという意味合いが強い言葉のようです。接頭語としての「御」を付けた「御使い・御遣い」は動作を表す場合は美化語、人を指す場合は尊敬語として扱われる言葉のようです。
ただ、平仮名で表現する「おつかい」は、「つかい」に「お」が付いた言葉というより、既に「おつかい」という名詞として独り歩きしている言葉のように思えます。
童謡『おつかいありさん』の中に登場する「おつかい」は、絵本『はじめてのおつかい』の中の「おつかい」と同様に、「親の依頼で買い物に行く」ということを指しているように思います。アニメの『サザエさん』や、広く一般社会においても同様の意味で使われているように感じます。
「親の依頼で買い物に行く」という「おつかい」は、食器を洗うとか洗濯物をたたむといった家事手伝いの一部ではありますが、家の外側で第3者との触れ合いがあるという点で、明らかに他の手伝いとは性質が異なります。
子どもにとって小銭を持って近所のお店に買い物に行くという行為は、人生最初の消費者教育実践の場であり、お店の人とのやり取りはコミュニケーション能力を養う場と言えます。
事実、私自身はおつかいに行った八百屋さん・豆腐屋さん・パン屋さんなどのそれぞれの店主と、知らず知らずの間に親を介さぬ直接的な人間関係を築いていました。
例えば、前出の『サザエさん』のカツオが、移動販売を逃した裏のおばあさんに代わって豆腐を買いに行ってあげるのも、カツオには普段行っている馴染みの豆腐屋さんがあるのだと思います。馴染みのお店があるので、安請け合いできるのです。