第2章 あなたの心は健康ですか?

② 「ねばならない」思考からの脱出

ストレス対処で心の健康を予防する

日頃から、スマホの充電と同じように、心の物差しにも、気を止めて欲しいとお願いをしました。厚生労働省の調査によると、2008年以降、生涯で一度はうつ病になる人は、およそ15人に1人の割合です。決して、他人事ではありません。

つまり、かなりの確率で、水道の蛇口の閉め方を知らない人がいることになります。実は、蛇口の閉め方にはいろいろな方法があるのです。と書いたら、そんなはずはない。閉め方は決まっていると言われそうなので、あえてここは、蛇口の閉め方を、ストレス対処という心理学用語に置き換えますね。

日常生活の中で、さまざまなストレスに晒されている私たちは、誰もがストレスフルな環境に適応しようとして、知らず知らずのうちに抵抗したり闘ったりしているのです。つまり、それがストレス対処です。

ストレスにもいろいろあります。先ほどの私の例ですと、母の死後におきた日常生活の環境変化ということになります。

ここで一般的な例を挙げるときりがないのですが、例えば、職場での人間関係、期限までに仕上げなければならない仕事、次から次に届くメール、家族間の意思疎通がうまくいかない、通勤の満員電車など、どれもあなたに精神的な負担をかけるストレスになることがあります。そのストレスが、自分で対処できる範囲内であると判断すれば、ストレスをうまくコントロールできるので影響が小さく、心の健康は保たれます。

一方で、対処できる範囲を超えていると判断する場合は、ストレスをうまくコントロールできないために、心の健康は害される可能性があります。ストレスにも、ストレス対処の方法にも、いろいろな種類があるのですが、心の健康を保つために大切なことは、直面しているストレスを、まずは、自分の力でコントロールできると思えることです。そのための蛇口の閉め方として、もちろん、自らの力で上手く難局を乗り切れたら何の問題もありません。

しかし、そんなに上手くいくことばかりではないでしょう。その時は、例えば、仲間に助けてもらう、話を聞いてもらう、ちょっぴり他人のせいにしてみる、やけ酒を飲む、ショッピングで憂さを晴らす、早めに帰ってふて寝をする、「まっ、いいか」とつぶやいてみる、などのストレス対処が、適切に選択できるかどうかが決め手となってきます。より多くのストレス対処の手段を持っている人、つまり、いろいろな蛇口の閉め方を知っている人は、困ったときの選択肢の幅が広く、心が健康に過ごせる人です。