小説 『「本当の自分」殺人事件[注目連載ピックアップ]』 【第9回】 水木 三甫 硬直する体に構わず、若い桃のような頬に唇を当てる。首筋からさらに下へ、新鮮な匂い。しがみついていた力は抜け… 【前回の記事を読む】「好きな店でいいよ」と絶対に言わない。行く店は決めてくれるし、選ぶ店のセンスもいい。浮き彫りになる、夫の物足りなさ。高校を卒業すると、希代美はすぐに故郷を捨てた。都内の小さな問屋にどうにか事務職を得た。希代美は一生懸命働いた。会社とアパートを行き来するだけの生活。とにかくお金を貯めたかった。一人で生きていくためにはお金を貯めなければいけないという強迫観念があった。預金通帳の残…
小説 『シウカラ』 【第10回】 山田 光美 書斎に現れたのは身長わずか20センチの少女だった!? 「キミは誰なんだい」謎の少女の正体は… 【前回の記事を読む】先代社長が遺した書棚には、日本人の祖先に関わる歴史の文献がたくさんあった……何故彼は死ななければならなかったのか?「遅いな」光一は、ふと我に返って思わずひとり呟いた。若社長がいっていたアキ子さんというお手伝いさんの帰りが遅いことに気がついた。その人が帰ってくるまでは、帰るわけにはいかない。待ち人の存在が意識に浮かび上がってきた瞬間、時間の流れが少しだけ早まったような気がした。…