翌朝目覚めると、健太君の姿がなかった。代わりに、丁寧な彼らしい字で書き置きがしてあった。

“おはようございます。先生の寝顔が安らかだったので、安心して帰ります。昨日先生が正直に全てを話してくれたこと、感謝しています。もっと好きになりました。俺、今、幸せです。また連絡します”

健太君の無欲な優しさに感謝しながら、一人静かに涙を流した。

――この人なら、大丈夫だ。迷いを帯びた期待が、確信に変わった。

翌週、健太君に改めて「今後もよろしくお願いします」と伝えたら、健太君が珍しく「やったぁ」と無邪気にガッツポーズで喜んでいた。それを見て、私の方が幸せな気持ちになった。元村さんに電話でその旨を伝えたら、彼女も自分のことのように喜んでくれた。ただ、たとえ健太君であっても、男性と毎日一緒にいるのは私がしんどくなりそうだったので、少し決め事をした。

・基本的には、週末うちで会う。

・週末会えない時は、平日のどこかで、彼がうちに来る。

・その他、会いたい時は、適宜連絡。

彼もそれで納得してくれた。念のために決め事をしたものの、実際は今までの彼氏と全く違って、一日中一緒にいても居心地が悪くならなかった。家で過ごすより楽しいからと、土日休める時は彼の好きなキャンプにも連れて行ってくれた。二人とも泥酔するまで飲んでいつの間にか寝ちゃって、翌朝お互いに二日酔いで吐きそうになりながらテントを片づけたり。海まで一緒に自転車を走らせて、砂浜で裸足になって勝負にもならないバドミントンをしたり。

そんな風に心から楽しいと思える時間を男性と過ごしたことは、それまで一度もなかった。

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