Ⅰ.人間の最大の死亡原因は何か?
1 罹患原因の存在しない病気はない
心臓発作および脳卒中の根本原因を究明する
ところで、本項で説明してきた記述内容は、病気の原因を究明するための専門的な研究過程において、いの一番というほど初期の段階で当たり前に行われるべき必須の諸事項であるという感想を皆さんは抱かれるのではないでしょうか。しかしながら、現代医学界では今なお、両発作の根本原因物質というようなものはなぜか特定されておりません。したがって当然、このような特定の物質をターゲットとした治療は現在行われていないのです。
ところが私の父は、この両発作の根本原因物質を特定することができたのです。そして、自ら得た結論が間違いの一切ないものであることを、様々な角度から確認、検証する作業を父はとうの昔に終了し、その根本原因物質が産生される部位、また、産生される際の化学的メカニズム等々を含め、関連する様々なことをも明らかにしました。
そもそも父から両発作に関する諸々の研究の話を私が聞いたのは、小学生であった60年以上も前のことになります。なお、最初に父から両発作の発症原因に関する研究の話を聞いた時点では、その根本原因物質を父はまだ特定できていませんでした。しかし、「医学研究というものは非常に理詰めになされるのだな」とつくづくと感じたことが懐かしく思い出されます。
その後、父が両発作の根本原因物質を特定するための、決定的な鍵となる情報が論文誌に初めて掲載発表されたのは1960年のことでした。ところが、この肝心な情報を父が得た経緯については、残念ながら私は父から聞き洩らしてしまったのです。父が出版した『心臓発作と脳溢血の根本原因と対策』(健康な家庭社、1967年)というタイトルの著書の「あとがき」の中で、父は4人の学者のお名前を挙げて、両発作の根本原因を解明した研究成果を自らが獲得する上で非常にお世話になった方々である旨のことを紹介し、各氏に対する謝意の言葉を述べています。
その4人の中の一人に鹿児島大学の元学長でもあられた薬学博士の福田得志教授(1891〜1975)がおられます(福田教授以外の3人については、私は父から何度か話を聞いていた。しかし、この方のことだけは著書のあとがきでそのお名前を初めて私は知った)。
なお、他の3人は、以下の方々です。古武弥四郎(こたけやしろう)博士(1879〜1968。“日本の生化学の祖”と讃え称されている高名な医学者。大阪帝国大学教授。初代和歌山県立医科大学長)と前述した佐々廉平博士、佐々木隆興(ささきたかおき)博士(1878〜1966。医学界初の文化勲章受章者。我が国の基礎医学研究界における当時のリーダー的存在の学者。佐々木研究所初代所長)です。
情報を得た経緯は不明ではありましたが、本書に示した両発作の根本原因物質解明の研究成果をあげる上での鍵となった情報は薬学領域の内容であったことから、私は、父はおそらく福田教授からこの情報をお聞きしたのであろうと推測したのです。そして、両発作の根本原因物質の正体までをも明らかにした研究成果を、今から半世紀以上も前の1962年2月に、九州大学で開催された第4回日本老年医学会総会において父は初めて講演発表したのです。