【前回の記事を読む】がんの原因に心当たり…「お酒が魔法の薬のように感じた」青年期とは

手術前

二 決断

次の日静岡の県立がんセンターに電話をすると、「セカンドオピニオンとしての意見を聞きたいのですね」と言われた。

そうか。今は患者を大切にするようになってきて、患者が良いと思う方の病院を選ぶことができるようになっていることをテレビで放送していたな。そのことを思い出した私は、「そうです。お願いします」と答えた。

すると担当者は私が隣の市の医療センターで受けた検査や検査結果について詳しく聞いてきた。私は資料を基に質問に答えていった。担当者は、このがんセンターには、腹腔鏡手術や手術支援ロボットのダ・ヴィンチを使った手術があるが、リンパ節に浸潤がありそうな時は、開腹による手術で胃の全摘をしていると言った。つまり、隣の市の医療センターの方法と同じであった。

当病院に変えてもよいが、手術の日は遅くなり、がんが進行する可能性もあることも教えてくれた。流石にがんの専門の医療機関だと思った。説明が分かりやすいし、患者の身になって考えてくれているのがよく分かった。

私は決断した。静岡の県立がんセンターで胃を切ろう。なくしたくないが仕方がない。

手術は一週間遅れるが、一週間でのがんの進行は知れている。がんの手術はがんの専門の病院でやってもらおう。悔しいのは一年前の検診の時に胃カメラにしなかったことだ。あの時胃カメラにしていれば胃をなくさずに済んだのに。今更悔しがっていても仕方ない。考えてみればお酒の飲み方が悪かった。まさに自業自得ではないか。

決断に迷いはつきものである。ただ後でああしておけば良かったとならないようにはしたいと思った。もう一度考えても、自分なりにやれそうなことはした。これで悔いはない。決断してからの私はいろいろな覚悟ができた。胃がなくなっても頑張って生きていこう。手術にも耐えよう。入院生活でもがんをやっつけるために頑張ろう。

手術まで二週間になったが、覚悟ができた私は充実して仕事に取り組めた。引き継ぎのための仕事がかなりあったことや入院の支度で忙しいことが幸いして、落ち込むことはなく、前向きな気持ちで授業等に取り組めた。私が、静岡の県立がんセンターでの手術を決断したことは、私のこれからの人生を大きく変えた。