【前回の記事を読む】「私の辞書には『老化』という文字はない」還暦男性の事情とは
五十歳男性の厳しい現実
七、タブーへの挑戦
セックスの話、他には離婚・お金・宗教・政治・美容整形などがあるが、このような話は生々し過ぎて、一般的にはタブーである。夫婦がずっと仲が良く、適度に刺激を与え合いながら性生活を楽しめるのが理想ではある。でも私の場合は、変わった性格を持った女性と結婚してしまったため離婚を決意し、このような方向へと進んだのである。
中にはこの中間、つまり別居や家庭内別居という状態が続いている夫婦も多いことと思う。そうすると当然セックスレスである。女性の場合四十歳後半で生理が終わり、いわゆる『オンナ』でなくなる訳だが、男性の場合の賞味期限はこれより十年先まである。
最近はサプリやいいED治療薬もあるので、これらをうまく活用すれば、さらに伸びることになる。このエッセイは中・壮年期、加えて初老の男性のセックスというタブーに挑戦する本だとも思っている。ただ、現在の日本国内の認識だと、単なる『エロジジイ』ということになるかもしれない。
でも、若者がセックスをしても咎められないのに、どうして五五歳の私のような者が同じことをすると、咎められたり笑われたりするのだろう? 若くて美しい女性とのスキンシップは、自分が若かった時に得た感覚と何ら変わるものではない。老人になると、異性とは触り触られる機会が減ってくる。老人たちは、たまに病院に行き、医者や看護師さんに触られると嬉しいという。
余談だが、『失楽園』などを書いた作家の渡辺淳一は、ある時こんなことを言っていた。彼は元々札幌で医者をやっていたのだが、ある日看護師さんに、
「先生、○○号室の□□さんが、いつも私のお尻を触るんです。何とか言ってやってください」
と相談されたそうである。これを単なるセクハラと言って片付けるのは簡単だが、これに対して彼は、
「いいじゃないか、それくらい。それが彼の生きるエネルギーになっているんだから。少し我慢して、触らせてあげなさい」
と。その看護師さんは、仕方なくしばらくはそうさせてあげていたのだが、ある日のこと、その患者さんはその行為をしなくなった。そうしたら、彼はその二日後に死んだそうである。日本においては、あまり金儲けをすると、その人は『金の亡者』と言われたりするが、どうもこれと似ている気がする。
私などは、仮に『エロジジイ』と呼ばれても、全く意に介さない。ただ、金で釣らない(チップは除く)ことと下品にならないようにすることだけには、いつも細心の注意を払っている。男というものは、若くて美しい女性の体でどれほど癒されることだろう? そして、どれほど明日への活力となることであろう? それのどこがいけないのだろう?
もういい加減セックスをタブー視するのはやめましょう。