うどんは窒息しにくい
窒息事故との関係で、注目いただきたい食品は“うどん”です。うどんやラーメンの窒息事故報告はありません。その理由は、うどんは表面がツルッとしていて、咀嚼期では適当なサイズに噛み切られ、空気の通り道が確保されるため、喉に詰まりにくいためと考えられます。
ただし、“そうめん(素麺)”は別です。高齢者で窒息事故を起こすことがあります。そうめんは長さ30cm ほどの細い麺で、うどんよりコシが強く細いため、噛むと麺が逃げるため、短く噛み切れません。
麺類は、落語で蕎麦を食べるときのしぐさのように、“すする(吸い込む)”という行為をします。そうめんは、1回の吸い込みで、すすれないことがあります。その場合、呼吸や嚥下機能が低下している方は、息を吸うタイミングに失敗し、こんにゃくゼリーのように、そうめんを長い塊のまま飲み込んで窒息することが考えられます。
もち小麦のお餅の話に戻ります。
うどんと同様の食感があり、むしろ大きさがあり、噛まないと飲み込めないため、食べやすい食品だと思います。とはいうものの、食べ方次第で窒息事故は起こります。もち小麦のお餅は、窒息のリスクを低減する食品と考えるのが、正しい理解です2)。
高齢者向け施設でもち小麦
もち小麦のお餅や麺類は、高齢者には食べやすい食品です。鍋物や椀物にもち小麦の麺やお餅を使用すると、煮溶けをしないので短時間放置することができ、大量調理の社会福祉施設などに適しています。
東京都品川区のケアホーム“西大井こうほうえん(サービス付高齢者向け住宅)”では、毎年小正月に、行事食として、もち小麦のお餅つき大会をしていただいています。施設長は看護師で、看護の字の通り、入所者の摂食嚥下状態をしっかり観察されています。
そして、もち小麦の“粒”を蒸かし、お餅にすれば、介護度の高い方でも食べられると判断され、もち小麦のお餅つき大会を催し、入所者でお餅を搗き、入所者と職員は、もち小麦のお餅で小正月を迎えています。また、埼玉県春日部市にあります、管理栄養士9名が在籍する病院では、栄養からの疾病回復を指導しており、もち小麦の餅つき大会をしていただきました。
2) 小児科と小児歯科の保健検討委員会 小児保健研究第79巻2020(524~532)