「幸せの気配」
ぽつんぽつんと
鳥がついばむ桜の花が
いつしか 桜の川となり
道を花の濁流へと変える
用務員のおじさん せわしなげ
ほうきでざこざこ
せっせせっせと 人の行く道を作る
春の狂宴は衰えて
けど春はこれからが本番と
桜の木は力強く 葉を茂らせる
人はもう 桜の下で立ち止まることもなく
黒く掃かれたアスファルトの上を
ただ 足早に行き来する
進級したての女子高生たち
甲高い声を上げて行き過ぎる
その無邪気な若さを
桜の頃より豊かに満ち満ちた
春の空気が人知れず穏やかに
包みこんでいた
きっと幸せってこんなもの
花びらどかされた道端に
黄色いたんぽぽ
春の空気に包まれて
太陽のように
力強く 咲いていた