~解け始めた時間~
いつからだろうか。気がつくとヒカリは凛を食事に誘う様になっていた。まひるにとって、ヒカリと凛が仲良くしている事が少し気に食わなかった。でも、ヒカリと凛の楽しそうな顔を見ると許してしまう自分が居た。
ある朝、ヒカリが凛を呼んだ。ドアをふと見るとドア横に「朴 凛」と表札が貼られていた。
まひるの心の中で、積もりに積もっていた事に対してリングの鐘が鳴る。
「あのですね~。此処は私達の家でヒカリがあなたを呼ぶから100歩譲って住まわしてあげて食事まで出して。私は家政婦じゃ無いのよ! 生活費も出さない人に此処までしてあげる義理は有りませんけど!」
すると凛がまさに、売りことばに買いことば。
「家事をしますよ! 僕の部屋を見たら分かるように、まひるよりきれ~にしてあげるし、食事だって超美味いもの作ってあげられるからお楽しみに!」
まひると凛の間でヒカリは呆れて言った。
「2人とも大人なんだから、朝からやめた方がお互いのためだよ」と言いながら学校へ行ってしまった。
後を追う様にまひるも仕事へ行ってしまった。
残された凛は、掃除を始めたが頭を抱えてしまった。幽霊の俺様が今まで料理なんかした事なかった。まひるの奴、分かってないのか? あの親子には、付いて行けないなぁ~。
夕方、まひるは家に入るなり驚いた。
洗濯物は畳んである! 埃もヒカリの脱ぎ捨てた服も片付いている! しかも、食事の支度まで! 何十年ぶりだろう~こんな生活。
まひるは嬉しさを堪えて、凛に「やれば出来るじゃないの、鍋は、誰でも作れるけどね」と、憎まれ口を叩いたが、嬉しさは隠せなかった。
楽しい食事の最中にまひるは、凛に
「名前、朴と言うんだ! って事はハーフなの?」
凛は今更、と思った。
あの頃のまひると変わってない事に嬉しさを感じていた。