すると多枝子が帰ってきた。

ガラッ。

「お父さん、御神さんはどうですか?」

「思った通りの人だね」(思った通り?? どういう事だ? 俺のことどう思っているのだ?)

二人だけがわかる会話の展開に、博樹は不安になった。しかし、何故かこの二人なら悪くはならないだろうという不思議な安心感はあった。二人の落ち着いた佇まいがそうさせているのだろう。

「お父さん、無理はいけないからもう寝てください」

「そうだな」

「御神さん。もうお昼だからランチでもいかがですか?」

博樹には断る理由がなかった。

「え……。ああ、はい」

相変わらず多枝子のペースには慣れない。それほど無茶ではないのだが、ポンポンと話が進む。ほんとの気持ちがわからないまま、距離だけが縮んでいく感じだ。今は秀夫の言った、気に入ってくれているという言葉だけが頼りだった。

「じゃあ、お父さんまた来るわね」

「お父さん……。また来てもいいですか?」

何故か博樹の口からもそんな台詞が出た。

「楽しみにしているよ」

とりあえずは気に入られたようだ。

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