この日は俺のマンションに泊まる約束をしていた。友達と一緒とは聞いていたが、瑠美の帰りが遅く、俺は駅まで迎えに行った。男女六人くらいのグループで、わいわい騒ぎながら、改札を出てきた。
「瑠美」
俺は迷わず瑠美に声をかけた。
「貢、どうしたの」
「帰りがあまりにも遅いから迎えにきたんだ」
「今日は友達と一緒だから遅くなるって言ったよね」
周りの連中から酒の匂いがプンプンしてきた。
「瑠美、酒を飲んでいるのか、未成年だろ、帰るぞ」
俺は瑠美の手を掴んで、その場から連れて行こうとした。
「瑠美、もう一軒行こうぜ」
一緒にいた男が瑠美を誘った。俺は男と一緒だったこと、未成年なのに酒を飲んでいたこと、いつもの素直さが消えてまるで反抗期のように、俺にはむかう態度が気に入らなかった。
「貢、離して、私はジンジャーエールしか飲んでいない、でももう子供じゃないんだから放っておいて」
「酒は飲んでいなくとも、未成年がうろうろする時間じゃないだろ、帰るぞ」
俺は瑠美の手を引っ張った。瑠美は反抗して「親みたいなこと言わないで、それが嫌で一人暮らし始めたのに、貢と一緒だと親といるみたいで嫌なの、だから結婚したくないの」
俺は瑠美を掴んでいた手を離した。俺の中で何かが弾けた。そのまま、瑠美に背を向けた。瑠美は男友達と一緒に別の方向へと姿を消した。それから、瑠美に連絡をしなかった。いや、何も考えられなかったといった方が正しい。