約束のお店に入ると、朝木さんが一人で席に座っていた。私たちに気付くと笑顔で立ち上がって奥のソファ席を勧めてくれる。この辺りのエスコート、さすがモテ男。朝木さんの前にはもちろんリサに座ってもらう。後輩の仕事が長引いており、もう少しかかるとのことで、私たちは一足先に乾杯した。

「いやー、人数揃ってなくてごめんね。俺は綺麗な女性二人を独り占めできるこの時間が続けばいいと思うけどね」

と悪びれもなく言う朝木さんは、ウインクの一つでもよこしそうで本日も絶好調だ。せっかく少人数でいろいろと話せるし、リサからは「客観的に見た朝木さんの印象を教えて!」と見定めの役を拝命しているため、私も積極的にお喋りに参加する。

私とリサは割とお酒が好きだが、朝木さんも相当強いようで、比較的ハイペースで三人とも二杯目だ。そのとき、こちらの席に向かう人影を感じた私はそのシルエットを見て……固まった。やってきたのは朝木さんの後輩ではなく、私の気になる彼だったのだ。

まさかこんな偶然ある? と内心はパニックで固まり続ける私に気付いたリサがお喋りをやめ、朝木さんが振り返る。

「ショウタ。遅かったな!」

「わりー、先輩に捕まってた」

現場での救難業務を終え、部内に戻ってデスクワークをしていたらしい彼が朝木さんに説明しながら、よっ、と手を上げて仲よさそうに挨拶をする。男性陣の前でリサが私の異変に気付き、そのよく働く勘を発動させる。

「もしかして彼って……」

耳元で囁くリサに、私は黙って顔を縦に振る。

「わーお。最高の展開。面白くなってきた!」

リサは小躍りでもしそうな勢いだ。どうしよう、これではリサたちの成り行きを見守るどころではない。私は嬉しいやら恥ずかしいやらで一気に複雑な感情に支配された。