来る日も来る日も、中国人留学生たちとキッティング

深圳市からはるばる1万台のタブレットが届いたのは、徳島県教育委員会へ納入する期日まであと2か月と迫っていた時期のことでした。届くとなると、段ボール箱が山のようにやってきます。ここから一気にキッティングを進めなければなりません。

アジア合同会社にとってキッティングは経験済み。とはいえ、これ以前にキッティングに取り組んだ和歌山市の案件でクロームブック4万台の設定を行った際は、十分な時間がありました。一方、CHUWIのタブレットのキッティングは時間がかぎられています。

そのうえ、この時点でアジア合同会社には7人の従業員がいましたが、通常業務である学校のシステム保守などの業務に携わっているため、キッティングに従事できるのは交代で2、3人が限度。私はこうした事態が起こることを予想して、事前に大学生アルバイトを募集し、この作業に備えていました。

以前、地元のとある私立大学に依頼されて、就職フェアにテナントを出店したことがあり、そのときの縁でアルバイトをすぐに集めることができたのは、幸運だったと思います。

キッティングを指導する私が陣頭指揮に立ち、そのほかに従業員が2、3名、あとの十数人はアルバイトという即席チームで、まずは徳島県下の小中学校に納めるタブレットを納期に間に合わせなければなりません。土曜・日曜・祝日も返上し、朝9時から毎晩12時頃まで、遅いときは午前2時まで仕事をしていた日もあったと思います。

来る日も来る日もタブレットをにらんだキッティングに明け暮れました。アルバイトには中国からの留学生が多くいました。当初は、日本人の大学生も3、4人いたのですが、だんだんフェードアウトして、最後の1か月はオール中国人。

この理由は二つあったと思います。

中国人留学生たちは、日本人には負けたくないという意識が明らかでした。片や日本人学生たちは、「なんでバイトで競争しなきゃいけないの」と思っていたようです。だんだんフェードアウトしていくことになったわけです。

そして、中国人留学生たちがうちに来て頑張るもう一つの理由は、日本における中国人に対する差別的ともいえる待遇です。たとえば、ファストフード店だとかコンビニだとか、接客を主とするアルバイト先に行くと、日本人がやらない、いやなことはすべて中国人アルバイトの仕事。言葉の問題があるからかもしれませんが、汚れ仕事をさせられることが多かったそうです。

彼らはそういう経験をずっとしていました。その点、私とすれば日本人も中国人も関係ありません。熱心に取り組んでくれればよいだけです。もちろん、時給も同じ。アルバイトとはいえ、意欲のある人間を使いたいと思うのは、自然な考え方だと思います。

私の妻が上海出身で中国語を話すことも、彼らにとっては重要なことだったでしょう。自国語が通じる居心地のよい環境だったのは間違いありません。彼らがさらに友人を呼んできて、わが社の臨時キッティングルームには、多くの中国人留学生が集うことになりました。多いときは30人はいたでしょうか。