プロローグ(二) ~この歳になったら、そろそろ好きなことをしませんか?~

五十歳、六十歳で独身、バツイチ、家庭内別居中のあなた、今楽しいですか? 日々の生活に潤いはありますか? 何か足りないと思いませんか? これで満足していると、無理やり自分に言い聞かせていませんか?

もっと、自分に正直になりましょうよ。やりたいことをやりましょうよ。嫌なことはもうやめましょう。もう十分ですよ。あなたはこれまで、多くの我慢を重ねながら一生懸命仕事をし、会社のため家族のために尽くしてきました。再就職をして、また世の中のために奉仕するのもいいですが、この歳になったら、そろそろ好きなことをしませんか? 恋をしませんか?

一生懸命積み上げてきた過去を捨て去るのには、勇気が要る。でも、一歩だけでいいから前に踏み出そう。どうしても嫌なら、その会社を辞めよう。どうしても嫌なら、引越ししよう。どうしても嫌なら、別居しよう。どうしてもうまくいかないのなら、離婚しよう。どうしても嫌なら、とりあえず好きなことをやってみよう。青春をやり直そう。夕陽に向かって走ろう。恋をしよう。

私は慣れ親しんだ苗字を変え、高給の会社を辞め、憧れの東京を去り、高級住宅地にある戸建住宅を捨て、ミスコン優勝の美人妻と別れ、仲の良かった大学時代の親友たちともさよならした。その結果、今は毎日自分らしく自由に楽しく過ごしている。ストレスがゼロで、時間が自由で、逆に新しい友人が増え、国内外にガールフレンドもいて、収入も増え、何の不満もない。

ただ、ここにたどり着くまでは、人一倍の苦労があった。しかし、これに関する具体的な話は絶対に人に話さない。その理由はカンタン、カッコ悪いからである。

現代は寿命が延び健康年齢も延びたため、若い頃にやっていた、或いはやりたいと思っていてできなかったことを五十歳前後になってから(再度)やり始める、というのが盛んになっている。子育てが終わり自分の時間が持てるようになると、子供の頃にやっていた習い事(テニス・サッカーなどのスポーツ、バレエ・絵画などの芸術、ピアノ・ヴァイオリンなどの楽器)をまたやり始めるのである。そして、もちろん恋もするのである。

再就職をし、七十歳まで(マジメに)働き続けますか? 週末にはもうエネルギーが残っていませんよ。

若者の前で説教をたれる五十歳、六十歳のジジイと、スポーツを楽しみ楽器を奏で恋をしているジジイと、どちらが素敵だろうか?

余談だが、私が子供の頃、近所に『説教ジジイ』が住んでいた。彼はいつも、「人間は苦労しなきゃダメだ」と言っていた。でも、私は彼に「苦労した結果が今のあんただね」と言ってやりたかった。それなら、苦労しない方がいいだろう。一流の人間は、具体的な苦労話はしないものだ。二流、三流の人間は、俺はこんなに頑張っている、と言いたがる。