第三話 熱い石ころ

「先生、側転でラインを越えたけど受かるだろうか」

「心配するな。大きな図体して」

教師はめんどくさそうに言うとくるりと背を向けてしまった。発表まではまだ時間がある。

常雄は暇潰しにその坂道の横のコンクリートの乾いた溝に丸い小石を転がし始めた。

「いいか。こいつが下まで転がっていけば合格だぞ」

彼はピンポン球ほどの石を溝のなかにポンと投げ込んだ。石はしばらく転がってから傾斜が緩やかなためと溝のなかにまで垂れ下っている芝生のため遮られて停止した。

「ちぇ、滑った。今度はお前のを占ってやろう」

明夫は笑いながらそれを見守っていた。

「おっ、調子いいぞ」

投げ出された石はついさっきの石の脇を越えて下まで転がっていくかに見えた。

「ああ、やっぱし駄目か」

石はやはり途中で止まってしまったのだ。