そしてクリスマス当日、彼らはいつものジーンズにアメフトのジャンパー、それに黄色の耳当てを付けてカイトの家へ向かった。着いた二人はビックリしてまぶたを閉じるのを忘れてしまった。
入り口には大きなサンタとトナカイが出迎えてくれ、家中クリスマスの装飾で輝いていた。あまりに綺麗な風景に二人は暫く立ち尽くしていたのだった。門にはホスト役のカイトが立っていた。
「おい二人とも遅いじゃないか、もうみんな来てるぞ、中に入ってまずはドリンクを取ってくれ、それからパーティーのスタートだ」
二人は中に入るとドリンクコーナーでドリンクを取り、めずらしそうに辺りを見渡したのだ。正面にはステージがあり、地元ではちょっと有名なバンドが呼ばれていた。料理は街の人気高級レストラン「ドリーム」からシェフが招かれて、ビュッフェスタイルで振る舞われた。
そこでも二人は目を丸くしたのだ。見た事もないステーキ、ローストビーフ、ミートローフにキッシュにマリネなどの豪華料理にスイーツも色とりどりだ。悔しいが施設で育った二人には見た事もない物が並んでいた。
「おいボブ、これは何だ」
「ケント、ステーキだよ。施設でも出た事があるだろう。サーマンが死んで酒代がいらなくなってから、ミルキーが作ってくれただろう」
「ああ、あれか。でも俺達はジャガイモで育ったみたいなもんで、ステーキと言ったってチキンステーキしか思い浮かばないよ」
ステージにカイトが上がって、得意そうに笑みを浮かべグラスを手に持った。
「さあパーティーの始まりだ! 乾杯!」
「さあみんな。どんどん飲んでジャンジャン食べてくれ」
「やあボブにケント、今日はよく来てくれた。みすぼらしい格好だがまあしょうがないな。施設では見た事もないだろうが、思いっきり食べてくれ」
二人はムッとしたが、美味しそうな香りには勝てるはずもなかった。
「おいボブ、ところであの美味そうなステーキはどうやって食べるんだ」
「まずは、誰かが食べるのを見ておこう。そして食べ方を真似しよう。カイトに馬鹿にされるとしゃくだからな」
「そうだな、それはいい考えだ」
二人はフライドポテトをほおばりながらステーキを見つめていた。すると、すぐに同級生がステーキを取りにきた。そしてシェフにこう言った。
「サーロインステーキを1枚カットで」
シェフは焼き立てのサーロインステーキを手際よくカットしお皿に盛り付けた。後は自分で横にあるニンニクチップを添えて、ステーキソースをかけてテーブルへと運んでいった。