プロローグ

1982年7月2日午後、NATO軍は首都ベンスでの駐留を開始した。

5月に誕生したボンザス大統領の要請によるものであったが、街中には戦車と兵士が行き交いまるで侵略しているかのようであった。反体制派のテロ攻撃が続き、その後ろ盾となっている隣国のロヒキャンナ共和国に対抗する為に要請されたものであった。

だが、日に日に窮屈になる市民生活に国民の不満は爆発寸前であった。

そんな中でも子供達は学校へ通い、お母さんは市場に買い物に出掛け、お父さんは仕事に精を出す。窮屈だが穏やかな日々が過ぎていった。

第一章  ヨーロッパでの生活

べンス郊外の閑静な住宅地にカスター一家は暮らしていた。

そこでは双子のボブとケント、いとこのマイケルがいつも仲良く遊んでいた。ボブとケントは双子だが、二卵性双生児で全く似ていない。ボブは色白で髪はブロンド瞳はブルーでしかもスマートで本当の美少年だ。弟のケントはちょっとぽっちゃりで、髪は茶色でくせ毛でくるくるだ。瞳も茶色でおまけに顔がやたらとでかい。おせじにも美少年には程遠い。

いとこのマイケルはボブにそっくりで、こちらが双子の弟のようだ。勿論、女の子にもモテモテだ。ボブとマイケルは大の仲良しだが、最大のライバルであった。勉強もスポーツもそしておませな恋もいつも競いあっていた。

それに比べケントは穏やかな性格で、いつも大好物のバナナを口にくわえていた。

ケントのお陰で三人はいつも楽しい時間を過ごしていた。そのボブとケントのお父さんはモンゴメリーといって街一番の大男だ。デカイのでも有名だがなんといっても彼の作るブドウはピカイチで最高に甘く、市場でも評判だ。そのブドウで造るワインは品評会で金賞を取る程の出来栄えでヨーロッパ中に輸出されている。

お母さんのジュリアーナも一緒に仕事をし、本当に働き者だ。それにお母さんの作るオムレツは最高でホテルのシェフも顔負けの美味だ。その味はおばあさんのキルニーナから受け継がれた物で、カスター家の名物料理であった。