第一章 ヨーロッパでの生活
アメリカに渡ってからの少年時代
秋が来て、三人はジュニアハイスクールへと進んだ。施設からは少し離れており、バスで通学しなくてはいけない。そこは大きな学校で他の地域からも生徒が集まっており、1年生は8クラスもある。
ボブ、ケント、マイケルは別々のクラスになった。ボブは1年A組でクラスは30人だ。男女半々で割とみんなおとなしいクラスだった。
ボブの隣に座ったのがカイトだった。彼は、青い瞳にブロンドの髪、中々の美男子で話し方も穏やかだ。しかもかなりのお坊ちゃまらしい。ボブにも気さくに話し掛けてきて、回りにもすぐに溶け込んでいった。
ボブもジュニアハイスクールの第一印象が良かったので楽しい学校生活が送れると思っていた。
新学期が始まったある日、体育の授業でバスケがあった。カイトはバスケが得意で、高速ドリブルでロングシュートも決められる腕前だ。それを見たクラスメートからは憧れの的として見られるようになった。ボブもスポーツには自信があったが、カイトにはかなわなかった。
クラスのみんなとバスケを楽しんでいた時、カイトのパスがボブへと放たれた。ロングパスでしかもかなりオーバー目に投げられたので、ボブはバックで走り込みコートギリギリでキャッチした。そして前に出てきたカイトへパスを返した。
その時ボールは右にそれ、カイトはキャッチ出来ずにボールはコートの外へ、そして相手ボールとなった。
カイトはボブの元へ走り寄り耳元でつぶやいた。
「へたくそ」
それにはボブも頭にきて次のパスはカイトの胸元へとナイスパスを投げた。そしてボブはゴールの下に走り込んだ。するとカイトからパスを渡されるものだと信じていたが、パスはされず、カイトがそのままドリブルでシュートを決めた。そして一言、言い放った。
「へたくそにパスはやれない」
さすがにボブもカイトへのパスをやめた。すると、それを見ていた先生からパスを回すようにとの指示が出た。
バスケのゲームが終わって教室へと向かった。カイトはボブへ「お前は俺にパスを回していればいい」と言い放ち教室の中へと消えていった。