この地方は春から秋にかけては大変穏やかで太陽の光が降り注ぎコーンやパプリカなど自然の恵の宝庫だ。ただ、冬は厳しく辺り一面雪に覆われる。この地方の多くの男は国の最南端にあるキッド鉱山へと出稼ぎに行く。そこは世界最大のダイヤモンド鉱山で、国中から出稼ぎにやって来る。

モンゴメリーも出稼ぎを始めて12年になるベテランだ。出稼ぎに行く前はいつもパーティーを開く。弟のスコッティー一家もいつも一緒だ。

「さあみんな、俺とスコッティーは明後日から出稼ぎに行く。3ヶ月間会えない分今日はいっぱい食べていっぱい話そう。それじゃ最高のワインで乾杯だ。子供達には美味しいブドウジュースを用意してるぞ」

テーブルには、オムレツやモッツァレラチーズにハム、チキンステーキなど御馳走が並んだ。

ワインも進み楽しい時間が流れていた。

「ボブ、ケント、お父さんのブドウは最高だろう。ヨーロッパ一だ。でもいいかよく聞くんだ。この辺りは大勢のブドウ農家がある。この国は、独立以来豊かな土地で沢山の農産物を作ってきた。だが、他の産業も成長させなければヨーロッパで取り残されてしまう。まだ君達には難しいかもしれないが、しっかり勉強してぜひ大学へ行って欲しい。そして、この国の為に新しい産業を生み出してくれ。今日見せておきたい物がある」

そう言うとモンゴメリーは台所下の野菜庫から大きな壺を取って来て、その茶色のふたを取った。

「さあ見てくれ、これは俺が12年間鉱山で働いてもらった給料のダイヤモンドだ」

ボブとケントはあまりの輝きに息を飲んだ。

「父さん。なんてダイヤモンドってきれいなんだ、びっくりだよ、それにこんなに沢山すごいじゃないか」

「これはさっき俺が言ってた、お前達の大学資金だ。お金の心配はいらん、だからしっかり勉強して役に立つ大人になってくれ」

「でも父さん、大切なブドウ畑はどうすんの。せっかく父さん達が作ったのに」

「心配するな、俺もスコッティーもまだまだ若い、100歳まで頑張るよ」

カスター家のパーティーは夜遅くまで続き、その2日後モンゴメリーとスコッティーは、大きなリュックサックを背負って鉱山へと向かって行った。

春になると、出稼ぎから二人が戻って来た。沢山のお土産とダイヤモンドを持って。ボブとケントとマイケルはとても楽しみにしていて、めったにしない家のお手伝いに精を出していた。そして三人は学校から帰ると近くの山へと遊び出掛けるのが日課になっていた。