重要なことは、管理会社そのものはお金を出費せず、すべてマンションの管理費+積立金を予算化し、月額の管理人費用と担当者の営業費用プラス年間に行う電気・ガスを含む設備修繕費用+理事会経費まですべて委託会社が代行します、という定額委託というものだ。そのため、基本管理費プラス積立金のしっかりしない不安定な管理組合には委託会社も寄り付かない。

Jはこの委託会社からの出資全くなしで管理組合を手助けしているシステムに、葬儀屋さんをだぶらせていた。四〇代前半、友だちから、「おい、葬儀屋をしないか」と言われていたのである。

起業したい夢は持っていたので話を聞いてみると、彼らは場所(葬儀場の手配)と付随するサービスを提供するだけで、特別な営業センスもいらないし、商品の値下げ要求もほとんどない。普通にしていても感謝される立場でいられて、やることは仕事と割り切れば、良い悪いもないし、これほどの商売はない、というものだった。真にマンションの手助けをサービス目的としたこの管理会社システムも同じ形態と言えそうだ。

マンション管理組合の理事たちは、すべて代行してもらっているので、第一に気が楽である。第二に「ここを修理して」と理事会で言うだけで取り上げられ、「○○○○円費用がかかります、良いですか」と確認、自分のお金意識の薄い理事たちはそのまま発注してしまう。本当に必要な修理だったのか議論されないまま通っていくのである。

ここでもJのように専門知識を持つ理事がいた場合、出た議題は本当に必要なのかチェックすれば、良い方向にいくことも考えられる。

一方、委託会社の担当者の仕事内容には、総会支援と理事会支援が契約書の中に記載されている。

しかし、彼らも複数棟を担当し、また会社から別の仕事も任されており、忙しいのでJのいうチェックなどすることはせず、決定事項をすいすいと運んで手配していく方を取ることになる。理事たちも満足した様子で、彼らのリードのもと散会していくのだった。

Jのジレンマはこのへんにあるのだが、まずは、知識を持ち、理論を身につけ、などと考えるため、ここ数年が過ぎてきていたということになる。

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