「河北警察署の三井といいます」
懐から警察手帳を取り出した。梅澤は、つられてその手帳に目をやった。黒革の手帳の表面に河北警察署と金字で刻まれていた。続いて6人の男達も教授室に入ってきた。梅澤は、背面の痛みとは別に寒気を感じた。
「これを見てください」
三井が一枚の紙を梅澤の目の前に突きつけた。
「捜査令状研究費詐欺容疑北陵医科大学研究棟5階梅澤教授室……」という文字が読めた。
「何かの間違いでしょう」
梅澤が言い終わらないうちに、
「読まれましたね。今から教授室を家宅捜査いたします」と三井が宣言した。梅澤は、
「私は、回診がありますので、どうぞ、勝手に調べてください」と腹立ちを抑えて告げた。
医局で回診を待っている人達のことの方が気になった。
「いえ、教授も同席してください」
三井が威圧的に言った。これ以上抵抗すると事態が悪化すると感じて、今日の回診は欠席することと、代理を中田准教授にお願いすることを秘書に伝えた。
「我々が、部屋の中を捜査しますので、教授はそれを見ていてください」
三井が宣言すると同時に6人の刑事が教授室内の捜査を開始した。
「研究費の詐欺?」
思い当たることなどない。