【前回の記事を読む】日本のテレビ初潜入!アメリカでの無重力体験に「無理だよな」
臨場感と音声の重要さを再認識
いよいよ文字通り世界を股にかけて撮影した「宇宙時代」のハイライト中のハイライトの試写が始まるのだ。
撮影の後半に、私だけが操縦室に入れてもらって手持ちのカメラで撮った分から試写をした。映像だけなので普通の映写機で十分だ。パイロットたちの操作、窓から見た雲がくるくる回る様子など画面は多少揺れているがそれなりに撮れていた。
次にオリコンで撮ったフィルムを見てみる。しかし、無重力状態に入る前は、照明が消え真っ暗に近いので画面が大揺れするのは分かるが何を撮っているのか全く分からない。
「ヤッパリ駄目だ……」。愕然として言葉も出ない。無重力状態に入って照明がついてからは大丈夫のはずだから音声もでる映写機に変えて映写をしてみる。照明が灯る少し前まで巻き戻してから映写を始めた。相変わらず画面が真っ暗だが音が聞こえた。
「ゴツーン」、「痛いー」、「こっち、コッチ」、「キャー」。
「ゴー…」とか「扇子とって……」などの音が入ってくると途端に画面から臨場感が噴出してきた。画面が暗くても、天井からぶら下がった足だけの画面でも何が起きているのかが手に取るように想像でき、「これなら行ける!」と直感した。
事実このシーンは臨場感たっぷりで予想以上の好評を得た。「初めてで、かつドラマティックな映像」が入手可能な企画こそ『成功の秘訣』である」ことを再度確認できたのだ。
それに加えて、ドキュメンタリーというテレビ番組のジャンルに音が果たす役割の大きさを痛感した。テレビが始まって間もないこの頃には「映像無しではテレビ番組は作れない……音より映像だ」と考える制作者が大勢いた。特に、ラジオからテレビに移った優秀な先輩ディレクターほど、その傾向が強かったように思う。
しかし、本当にそうなのか? 最初からテレビ時代にもぐりこんだ私は大いに不満であった。「もしそうなら、テレビというメディアでは映像が入手できない素材は物事の真実を伝えられないつまらないものになってしまう」からである。