のぞみの結末
14
春樹の心変わりに淳美は立ち直れずにいた。何もする気になれず、会社を休みベッドで過ごす日々が続いた。夜も眠れずに朝まで泣き明かした。生きている実感がまったくなかった。
まず淳美は自分を責めた。自分のどこがいけなかったのだろう。春樹との会話、春樹との交わり、春樹との時間のすべてを思い返してみた。喧嘩は一度もしたことがなかった。春樹が不快な顔を見せたことも一度もなかった。考えに考えたが、自分に悪いところがあったとはどうしても思えなかった。
次に淳美は春樹を責めた。もしかしたら自分は春樹に弄ばれただけなのだろうか。あれがいつもの春樹のやり口なのか。淳美の中に春樹に対する怒りが沸き上がってきた。春樹にはそれ相応の罰を受けさせなければいけない。しかし、自分に何ができるだろうか。
淳美は希代美に相談するために電話した。あかねから連絡が来なくなった。あの人がうまく進めてくれている証拠だろう。光彦は淳美を忘れるためにも、あかねには会いたくなかった。あかねに会えば嫌でも淳美を思い出してしまう。
早くすべてを忘れて新しい人生をスタートさせなければいけない。一人部屋に閉じこもっているだけでは先が見えない。今、自分に一番必要なのは新しい出会いだった。
電話の向こうから聞こえる声は、淳美のものとは思えないほど生気がなかった。相談したいことがあると言っていたが、たぶん春樹の件だろう。淳美に対して自分が何を助言できよう。何といっても張本人は自分自身なのだから。それでもとにかく淳美のマンションを希代美は訪ねた。
希代美は淳美の変わりように愕然とした。頬はやつれ、目の下に濃い隈ができている。淳美の美貌は見る影もなかった。服は何日も取り替えていないのだろう、シワだらけのうえ染みが付いている。テーブルの上には空のカップラーメンとビールの空き缶が無造作に置いてある。部屋も散らかり放題で、歩く隙間を探すのも一苦労するほどだった。
あのオシャレできれい好きな淳美とはまったくの別人に変わっていた。自分の幸せのために、これほどまでに友人を傷つけてしまったことに希代美は動揺した。
淳美には早く元気な元の姿に戻ってほしかった。他人から見れば、わがままで独善的な考えだと思われるだろうが、それが希代美の本心だった。