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今役立つ認知症のアドバイス
その2 もふもふ:なでる効果
NHKのテレビで、ペットの動物たちが登場する「もふもふモフモフ」という番組があります。タイトル通り、動物たちの毛がもふもふ、ふわふわ、ふさふさして癒される象徴となっているようです。猫カフェや犬カフェがはやりとなったように、もふもふした動物を見ると、「抱っこしたい」「撫でてみたい」という欲求が湧きます。そして実際に撫でてみると、その優しい感触に癒され、精神的に豊かになった感じがします。
逆に、ペットの動物のほうも撫でられるのが好きなようです。私の家では2匹の犬を飼っていますが、どちらも撫でられるのが大好きです。背中をなでてやると、「お腹も撫でて」と言わんばかりにお腹を見せて催促します。どちらも長毛種のワンちゃんで、栄養も良いので(片方がアレルギーがあるので食事は手作り)、毛並みも綺麗です。
前はビロードのような肌触りでしたが、今は10歳を超えた老犬なので、使い古した毛足の長いタオルのようになっています。それはそれで愛おしく、「長生きしてくれて有難う」と思いながら愛でています。
さて、「なでる」ことには気持ちが良い以外の効果があるのでしょうか。子供が怪我をした時などに、「痛いの痛いの飛んで行け」などとなでながらおまじないをしますね。また、自分でも関節や筋肉に軽い痛みがある時になでたりさすったりすると、少し良くなる感じがします。
その他の物理的な刺激としては、マッサージなどの圧力、そしてちょっと違う種類ですが、温泉や湿布で温めたり冷やしたりする温度刺激などもあります。最近、群馬大学の柴崎ドクターが率いる研究チームが明らかにしたところでは、なでたりさすったりする物理的な刺激が、障害された部位の神経細胞の軸索突起を伸ばし、再生を促すそうです**。
生物学的な機序としては、まず物理的な刺激によってTRPV2と呼ばれる蛋白質がその場所に急速に移動し集まります。このTRPV2はセンサーとして働き、物理的な刺激から起こる振動によってスイッチが入りますが、集積していることでその反応が増幅されます。
TRPV2が活性化されると、神経細胞外から大量のカルシウムイオンが細胞内へ流入します。そしてその神経細胞の細胞骨格の再編成が起こり、神経の突起が伸び、再生が促されるという仕組みだそうです。この機序で障害部位が再生し、機能改善につながることが期待されています。