私の経験では、なでたりさすったりする触覚による優しい刺激は、身体やメンタルが弱っている時に特に効果を発揮すると思います。私は毎年健診で胃カメラの検査を受けていますが、検査中に嘔気を繰り返し感じていつも苦しい思いをします。昨年は検査中に介助の方に背中をさすってもらい、すごく楽に感じられ、終了時に思わずお礼を言いました。

もう一つ思い出すことは、以前飼っていた犬が亡くなる日の前の夜のことです。ワンコはもう老衰で何も食べられず、飲めず、目をつぶって自分のクッションにじっと横たわっていました。そして、オオカミの遠吠えのように吠え始めました。細く、長い鳴き声で、何度も繰り返し……。

普段は静かでほとんど鳴かない犬だったので、本当に心細く感じて怖く思っているんだと、私は胸が締め付けられるようでした。名前を呼んでも全然聞こえていないようで、まったく反応しませんでしたが、背中をなでながら、「ここにいるからね。大丈夫だよ」と言うと、安心したように鳴きやみました。そのあと眠りに就くまでさすり続けました。そして明け方までに息を引き取りました。最後になでてあげられて良かったと思いました。

さらに調べたところ、動物をなでる刺激で脳内麻薬と呼ばれるβエンドルフィンという神経伝達物質が分泌されるということです。このβエンドルフィンは、痛み刺激や運動などのストレスがある際や、逆にリラックスしている場合などに分泌され、さまざまな効果があるそうです。

まず、脳内麻薬の名前の通り強い鎮痛効果があり、そのほか免疫系を活性化させたり、多幸感をもたらし、脳の活動を活発にするという効果などもあります。そういえば、アニマルセラピーやセラピードッグなども良く聞く言葉ですね。動物と触れ合うことで、認知症を予防したり改善するほどの効果はないとしても、一時的にでも精神的に癒されたり脳が活発になるのは良いことではないでしょうか。