第一章 子どもの地頭力を鍛えるためのトヨタ式

数学力を鍛える

トヨタでは、「定量的に数値化すべし!」と言われる。

経営者は、経理能力が問われる。学生は、理系に進むにしろ、文系に進むにしろ、もちろん数学力が必須である。特に、東京大学の入試では、文系であっても数学の得点が合否を左右すると言われる。

幼少期から、数字に対する拒絶感や抵抗感をなくす必要がある。よって身近に数字に接することができればと考えた。そこで思いついたのが、子どもが大好きな積み木の代わりに、数字が付与された麻雀牌をおもちゃとして与えることだ。

ピラミッドやタワーを作るなどの積み木遊びをすることで、トンボのような複眼的な視点と、立体図形的な三次元の空間認識力を身につける。また、トランプの神経衰弱遊びを、麻雀牌を使ってさせることにより、記憶力を向上させた。

子どもは、麻雀牌をシャッフルして、ガチャガチャ音が出るのを楽しんでいた。数字順、牌の種類毎に並び替えるなど、いろいろな組合せパターンで遊ぶことができる。知的遊びのあとは、パズル感覚でお片づけをする。

ストップウォッチで「よーい、ドン!」と、時間を計測するのも楽しい。

つまり、足踏みをしないで整理・整頓を実践させる。指先を刺激した楽しい訓練で、知能の発達に役立つ。結果、とても手先の器用な子どもに育った。

しかし、日本の麻雀牌は小さく、積み木をしにくいので、幼児にも扱いやすい大きな中国の麻雀牌を代用してもよい。絵柄がカラフルで、見ているだけでもおもしろいのだ。

またスーパーの買物時に、かごに入れた商品の価格の合計値を暗算で計算をさせた。レジのレシートを確認し、「ご名答!」と褒めてあげた。

「玉ねぎ三個の袋入りで百九十八円、バラ一個が七十円の場合、袋入りを購入すると、何円お得な買い物か?」などのクイズをする。

子どもには、常日頃から、コスト意識をもたせよう。そして陳列棚から石鹸やバナナなどの商品を探すゲームも、カテゴリーの分類力がつく。単なる買い物であっても、有益な訓練ができるのだ。

昭和っぽいレトロな駄菓子屋さんで、お小遣い二百円の範囲内であれこれとやりくりをしながら、楽しそうにガムやラムネを選んでいる姿が思い出される。

ガソリンスタンドでは、五十ℓを給油した際、「四百km走行したけど、燃費は何km?」とクイズを出す。八kmと答えたら、「ご名答! では、なぜ冬季は、燃費が悪いのかな?」「走りかたをどうカイゼンしたら燃費が良くなるのかな?」と考え続けさせる。

さらに、レストランの定食では、ご飯・味噌汁・おかずなどの素材原価から、利益がこのくらいかと、アバウトで逆算させる。ちょっとした飲食店の経営者遊びをする。メニューから料理の原価当てクイズをして、コストパフォーマンスに関して話し合う。食材から、産地や栽培方法や収穫方法や輸送方法までさかのぼり、想像を膨らませてみる。

つまり、何かと何かを関連させる訓練により、見えない世界を瞬時に想起させる。

おかずのハンバーグを五等分、ソーセージを三等分させることで、容量計算の感覚を鍛えるのもおもしろい。アルバイトのお姉さんの小粋なおもてなしに気づいたら、話題に上げてみよう。

観察力や洞察力が養われる。また、友達の家族と共同でフリーマーケットに出店し、出品物の選定と仕入れ・価格設定・陳列・ポップ・呼び込み・クロージングなどの一連を経験させて、商売のフローやしくみを楽しく学ぶ。

そして、我が家の家計の収支を、親の給与明細書をもとに、包み隠さずに説明する。

所得・税金・ローン返済・食費などの生活費から、順当な貯蓄額を逆算させる。ちょっとしたファイナンシャルプランナー遊びで、経済の勉強をする。

将来に向けて、お金を生み出す投資なのか、単なるムダな浪費なのかを判別できるようになる。電気・ガス・水道などの公共料金の分析により、マネー節約の必要性を認識し、カイゼンを行い、そのデータをアナログの折れ線グラフに書いて、成果を確認する。