第一章 子どもの地頭力を鍛えるためのトヨタ式
「モノ」から「コト」へ
ときめき体験は、心と体の栄養素であり、自分の世界が果てしなく広がる。万巻の書に値するくらいの価値があり、型破りな人材が育成される。漫然としていないで、子どもが何に興味を示すのかの高感度のアンテナを張りたい。
例えば、子どもがミニカーに興味をもった場合、トヨタ産業技術記念館に行く・カーディーラーに行く・街なかを走る車名当てクイズをする・ナンバープレートの数字の合計値を暗算させる・働くクルマの図鑑を読む・ゴーカートでサーキットを走ってみるなどの具体的な関連体験を、次から次へと実施してみた。
家族でのお出かけは、マイカーを極力使わないで、知的好奇心を刺激する電車やバスなどの公共交通機関を活用し、乗務員さんの仕事ぶりを観察したり、車輛の製造年月を確認したり、停車駅当てクイズなどをすれば、盛り上がって楽しい。結果、専門知識の深掘りもできるし、記憶力も高まる。
子どもが興味を示したことに対して、親も本気で好きになることが鉄則である。親の無邪気な様子を見た子どもは、うれしくなって、さらに興味をもつようになる。
感動体験は、「百聞は一見に如かず」である。つまり、苗木の枝葉をグングン伸ばして、子どもの潜在意識の根底にある知的好奇心をあらゆる角度から心地よく刺激したい。
また、何気ない日常のディテールにこだわることが大切である。執着心や計画実行力が養われる。
映画・演劇・講演会・地域の各種イベントやお祭りなどに積極的に出向けば、豊かな一般教養と社交性が自然に身につくはずである。無形のものに付加価値を見いだす訓練をしたい。
例えばスポーツ観戦では、プロ野球や東京六大学野球やサッカーJリーグなどのスタジアムでの観戦を通じて、テレビとの臨場感の相違を、生で体感させた。特に、東京六大学野球の東大生が勝利を目指す気迫あふれるプレーを観戦すると、「東大生でも、ここまでできるんだ!」と、文武両道のすさまじさを実感させられる。そして、翌日の新聞記事を読んで、客観視させる訓練をする。
そして何より、プロフェッショナル人材の本物の技術と心意気をリアル体感させたい。
圧倒的な場数を踏み、後述する標準作業をひたすら繰り返し、体に焼きつけると、凄みのあるプロに近づける。
親として、子どもの興味から連想した感動体験のための環境づくりが、肝要である。すると、一人じゃない、皆に支えられているという感謝の念をもつことができる。