最悪の国境通過 イラン(メシェッド)→アフガニスタン(ヘラート) 一九七四年二月一三日
今日はイランからアフガニスタンへの国境越えであるが、これまでの国境通過のうちで最悪の日だった。
ところで、昨日テヘランからこのメシェッドに着いて街を歩いていると、車体に日本の電機メーカーのN社の社名を英語で書かれた車が歩いている傍に止まった。そして車を運転していたイラン人が降りてきて、日本企業のN社で働いていてついこの前日本に研修に行ってきたが、日本は実にすばらしいと話しかけてくる。彼が安いホテルを紹介してくれて、夜再びホテルに迎えにきて彼らの事務所に連れて行ってくれる。事務所で一人の日本人を紹介される。
N社がイラン全土にマイクロウェイブを設置したが、その補修・維持はイラン人が行うので、彼らの教育のために単身でこちらに来ているとのこと。私と同じ年齢の二十六歳だそうだが、こちらは気楽に旅行をしているのに、同じ期間に彼は一人でイラン人を教育する仕事をしている。彼はわれわれをうらやましがるが、こちらは自分の将来にあせりを感じる。
彼の部屋に連れて行かれ、ごはん、魚の煮付け、ラーメン、おしんこの日本食を作って食べさせてくれる。そして、帰りには日本の古い週刊誌をもらってくる。
昨日、アフガニスタンの国境行きのバスチケットを買っておいたバス会社に行く。昨日は七時発だと言っていたが、今朝は七時半だとのこと。まあ、それでもバスは無事に出発。
今日もよい天気で青空がきれいだ。途中は雪原だが太陽が出てくるとバスの中は暖かい。その雪原の中に羊が群れているが、こんな荒地に食べる草があるのだろうかと心配になる。昼前に国境に着く。
イランの出国手続きを終えて建物を出るとライフル銃を持った兵士が立っている。そのはるか向こうのかすんで見える所がアフガニスタンの入国審査所で、そこまで一本の道路がまっすぐ伸びている。周りは何もない荒涼とした緩衝地帯となっている。
ここで、アフガニスタンの国境の町であるヘラート行きのバスが出るというので、リュックを下ろして待つ。道路にはアフガニスタンからイランへの入国手続きを待っている、ボディにゴタゴタと極彩色で絵が描かれ、荷物を満載した古ぼけたトラックがたくさん並んでいる。外は風が冷たいので、ヘラート行きのバスの中で待っているがなかなか出発しない。乗客は大半がわれわれのような各国の若者貧乏旅行者である。