中村は子供たちが元気に育つためにどうしたら良いのかと日々、悩んでいた。子供たちの稽古を通して人との繋がりをつくりながら、武道本来の礼儀や精神を教えるべく考えていた。合気道という武道を子供たちに理解させ教えていく困難さを感じていた。
しかし、結衣を中心として清や仁も着々と技を覚えていた。基本の大切さを教え、捌きや崩しも徐々に身に付けつつあった。子供たちの帰った後の道場は静まり返っていた。周りの親たちにも子供をどうするか悩み相談されていた。子供たちはすくすくと育ち、少しずつ自我も芽生え始めているようだった。
子供たちの帰った後、道場には一般部の大人たちが集まり始めていた。一般部が始まると、集まった大人たちは先生の後ろに整列をして、神前に対して正座し、お辞儀をし、先生に礼をして準備体操を始める。合気道は剣道同様に正中線に体の中心を置くことにより全ての技が成り立っている。
臂力の養成、体の変更、終末動作(合気道の基本動作)、一つ、一つの動作が重要視されている。技も常に体の中心から行い、崩しを重要視し、相手と同一化(力の向きを同一にする)や相手の姿勢や重心を崩すことを心掛けている。技も繊細さを求められ、決して気のみに頼った気合で人を倒す武道ではない。基本に忠実に稽古を行う必要がある。
楽しく子供たちに学ばせるには何か別の目的を与えざるを得ないだろう。その中で武道に求められる礼儀、礼節を身に付けさせ、人間としての基礎をつくりたいと思っていた。
子供たちが自らの足で立ち人生を切り開くために大きな礎をつくり、人間関係の育成に努めなければならない。合気道という武道は常に相手と対することから相手の気持ちや動きを察し、相手の力の方向を読み同一化し、先をとる必要があり決して力だけの武道ではない。