えがおのリレーだいさくせん
「キリンのやつめ。なんで、ぼくがおこられなきゃいけないんだ。声が小さいくらいでどなるなんて、どうかしちゃってるよ」
声が小さいのは、しかたがないのです。からだが小さいのですから。背の高いキリンには、ムックの声はとどかなかったのです。ぷんぷん虫のくっついたキリンには、自分の背たけが高いこと、あいてが小さいことを、考えてあげることができなくなっていたのです。
けらけら森には、もうだれも笑う人がいなくなってしまいました。
ただひとり、ネズミのネネちゃんをのぞいては。キリンからぷんぷん虫がうつってしまったムックは、おりょうりじょうずなネズミのネネちゃんに会いにいきました。ネネちゃんの家は、けらけら森の中でも木の実がたくさんとれる場所にありました。
小さな赤いとんがりぼうしをかぶったような屋根をした家が、ネネちゃんの家でした。その家のえんとつから、もくもくとおいしそうなけむりが出ていました。
ムックは家に入るなり、「ネネちゃん!きのうぼくがかしてあげた色鉛筆をかえしてよ!」と、ぷんぷん虫をひっさげてネネちゃんにおこりました。
「あら、ムックひさしぶり。どうしたの?そんなにぷんぷんしちゃって」
ネネちゃんはにこにこ顔です。ちょうどケーキづくりのまっさい中で、オーブンにスポンジの生地を入れているところでした。
「今ね、クリのケーキをつくっているところなの。あっ、そこにあるスケッチブックを見てちょうだい。ケーキをイメージして描いてみたの」
ムックが、テーブルの上においてあるネネちゃんのスケッチブックを見てみると、ムックの色鉛筆で描いたのでしょう。まるいクリ色をしたケーキのうえに、生クリームがたっぷりと、さらに、生クリームの上に木の実がたくさんのった絵があざやかに描かれてありました。
「これ、ぼくの色鉛筆で描いたの?とってもおいしそうだよ!」
ムックは、目をまんまるにしていいました。
「そうよ。かしてくれてありがとう。かざりつけ、てつだってちょうだい。できたら、けらけら森のみんなにもわけてあげましょうよ。名付けて、えがおのリレーだいさくせん!」
「えがおのリレーだいさくせん?」
ムックの目がてんになりました。ネネちゃんは、ムックにこそこそっとさくせんのひみつをおしえてくれました。
「それはいい考えだよ!さすがネネちゃん!」
ムックは、おもわずぴょんぴょんととびはねました。ふたりは、やきあがったスポンジをさましたあと、クリームをぬり、木の実をたくさんのせました。
「できたあ!」
ふたりは、声をそろえてさけびました。ケーキを人数ぶんに切って、小さな箱の中に入れました。森中のみんなにあげるので、ケーキは小さくなってしまいましたが。
小さな箱をたくさんかかえて、ふたりはまず、ゾウの家にいきました。