おるすばんなんてだいきらい

「今日、おしごとのない日だって、おかあさんいってたじゃない」

どうしてどうして、なんでいつもわたしがひとりでおるすばんしなきゃならないの? みきは、なっとくがいかないようすです。みきのおかあさんは、困ったようにいいました。

「ごめんね。ほんのちょっとだけだから。すぐかえってくるから」

「いつもそればっかり!」

みきは口をとんがらせながらいいました。みきは、ほんのちょっとがどれくらい長いのかをよく知っていました。おかあさんにとってはほんのちょっとでも、みきにとったらつぎの日がやってくるくらいとっても長い時間なのです。

「きょうはどようびだから、おひるまでにはかえってくるわ。だいすきなおやつ、買ってかえってくるから、ね?」

そういい残すと、おかあさんは仕事に出かけていきました。みきには、お兄ちゃんがいました。お兄ちゃんのたけるも、友だちとあそびにいくといっています。

「ほら! だれもわたしのそばにいてくれないじゃない」

たけるは、みきを残していなくなってしまいました。あーあ、ほんとにひとりぼっちになっちゃった。みきは、テーブルの上においてあるテレビのリモコンを見つめました。見たいテレビはもうぜんぶ見ていました。宿題もやる気になりません。ピアノのれんしゅうなんてもっとやりたくありません。だいすきなぬりえさえも、つまらなく感じるのです。つまんない、つまんない、つまんなーい! みきは、近くにあった絵本をゆかになげおとしました。どん!

「いたい!」

──え? だれか何かいった? みきは、ちらかった部屋をすみからすみまで見わたしました。

──だれかいたよね、ぜったいいたよね。声がしたもの。

そのときです。

「いま、わたしたちをなげたでしょ!」

1さつの絵本が、宙にうかびあがったかとおもうと、くるくるとまわりながら、テーブルの上に、コトン、とおちました。そして、それぞれのページの中にいるどうぶつたちが、ペラペラとページをうつしながら、順番におしゃべりをしはじめたのです。なんてことでしょう。絵本のどうぶつたちが、みきに向かってはなしかけているではありませんか。