その絵本の名前は、『ハリネズミ・ココのおひっこし』という、小さいころ、おかあさんにたくさん読んでもらったお気に入りの絵本でした。なんでお気に入りなのかって聞かれても困るけど。とにかく、ハリネズミのココをだいすきになってしまったのです。あ、これはいつかみなさんも読んでみてくださいね。
みきたちのはなしにもどりましょう。絵本のページがペラペラとめくれるたび、それぞれがすき勝手にはなすので、とってもへんなことになっていました。ひとりがはなしおわらないうちに、つぎつぎとページがめくれてしまって、よにもまたへんてこなことが、おこってしまったというわけです。
ハリネズミのココ「いったいだれが、こんなこと……」
ペラッ。
クモ「わたしがいっしょうけんめいつくったあみ……」
ペラッ。
ハチ「まあ、たくさんとってきたわた……」
ペラッ。
フクロウ「ほー、ほー、ほー、これはな……」
ペラッ。
チョウ「とってもきもちよくとん……」
ペラッ。
カタツムリ「……」
ペラッ。
ペラペラとページがすすみ、みんな何をいいたいのかちんぷんかんぷんです。
「ちょっと、ちょっとまってよ! みんな何をいってるのかさっぱりわからないじゃないの。ペラペラはなさないで、みんな出てきてちょうだい。ちゃんと顔を見て、向きあってはなすべきでしょ」
本のページが静かになりました。こそこそこそ。なにやら、ひそひそはなしているようです。また静かになりました。こそこそこそ。またはなし声が聞こえてきました。また、静かになりました。それを、いつまでもずっとくりかえしています。
まだかな……。みきがそうおもっていると、ちょーん、こーん、ぽーん、ぴょーん、ぱーんと、それぞれのページから、どうぶつたちが花火のようにとびだしてきました。そして、ぜんいんが1れつにならぶと、みきに向かっておじぎをしたのです。