最強のコンビ
年長少年は教えることが上手で、細かく説明をしながら、自ら手を加え直してくれた。特に、野鳥を生け捕りにする罠は、大人顔負けの智恵を働かしては、多く捕まえるようになった。野鳥の動き、習性、止まる枝木、餌の探し方、食べ方などを見極め、それぞれの野鳥に合った仕掛けを作った。
また、野鳥の巣を見つけ、親鳥の生態、巣からの出方、入り方の動きを観察してはその特性を理解した。餌を運んで来たとき、直接巣へ入らずに一旦最寄りの場所へ立ち止まり、周辺を点検警戒してから巣へ運ぶが、雄雌の巣への入り方が異なっていた。
特に、子育て中の巣へ餌を運ぶ雄雌の親鳥の巣への入り方にも興味を抱いた。雄は右から、雌は左からと餌を運びに入り、ひなに平等に餌を与えていたのかもしれなかった。巣を出るときは、直接飛び立つことをしないで枝伝いに渡り、また餌を取りに行く動作を繰り返していたが、これも巣と育ち盛りのひなを守る智恵であると感じた。
これらを数時間見ていても飽きない中條少年であった。極めて観察力が長けていたようで、年長少年はこれを良く聞き取り、仕掛ける罠に創意と工夫を加える技能が、一段と高まっていった。この時の二人は絶妙なコンビであった。
生き物相手であるだけに二人の間では決め事があった。道具を作るのが目的で、生け捕りにした野鳥は必ず放鳥することだった。それだけに罠を仕掛けた場所へは毎日見に行く必要があった。手抜きをして日を置くと死なせてしまうことになるからである。
種類によっては、圧力でショック死をする野鳥がいたので、網に膨らみを持たせたりして工夫をしたが、余裕があり過ぎると逃げられていた。失敗と成功を繰り返しては、その野鳥にあった巧みな仕掛け作りができるようになった。
またこの年長少年の父親は、電気工事業を営んでおり、自宅に遊びに行っては電気工作に関する教示を受けた。
「秀樹君。電気は面白いぞ。これからの時代はいろいろな変化が見られる。電気製品が沢山作られるぞ。基本を学んでみるか」
探求心旺盛な二人の少年を相手に嬉しそうに、はんだごての使い方、接線の仕方、鉱石ラジオの組み立て方を教えてくれた。中條が、探知監視システムを開発し、獣道に罠を張るようになった原点は、それらから養われていたのかも知れない。これらが、窃盗犯捜査の基本を身に付け、多くの犯人を捕捉することにつながっていったとも言える。