十二、プロポーズ
二度目に会ったのは、一週間後の日曜日だった。
角田市から一時間以上かかる仙台駅まで、テレビと冷温庫の付いた大きなワゴン車でお迎えに来てくれた。
克裕さんは、「今日は、私の住んでいる角田市へ行ってみましょう」と車を走らせた。
角田市は初めて行く場所で、四号バイパスを一時間ほど南下すると、左に曲り、すぐに着くのかと思ったら、阿武隈川沿いに、どこまでも、どこまでも走って行く。
十五分くらい走っただろうか。
街のまん中に、なぜか巨大なロケットが、すっくと立っているコンパクトな街が出現。こんなところに、こんな小さな街があったのかという驚きである。
私の新しい王子様は、たくましく、行動力があり、おだやかで優しくて、ワゴンの馬車で、どこへでも、グイグイ連れて行ってくれる。
角田の体育館や高校、お店や自宅に行き、夕方になったので帰ろうと、靴を履いていたら、「結婚しよう」と突然プロポーズされた。その勢いに、思わず私も、「はい」と即答してしまった。
裏表がなく、心は優しい克裕さんの温かい人柄が、私の心の中までずんずんと温めてゆくようだ。この日から、何をしていても頭の中は『克裕さん』でいっぱいになっていった。
そして、毎週休みの日には、彼が仙台まで車を走らせて来てくれて、デートをし、時には角田へ行き、また仙台へ送ってもらうなど、私の家と彼の家の間に、タイヤの跡がついてしまったのではないかと思うぐらい、毎週のように行き来してもらった。
そこで、第一の不思議である。私には一人だけ妹がおり『まなみ』という名前。そして、彼にも姉一人と妹一人がおり、妹さんのお名前が『真奈美』さんなのだ。
何より驚いたのが、彼のお母様のお名前が、『みどり』さんで、私も高橋に嫁いで、『高橋みどり』になったので、平仮名の『みどり』の同姓同名が、一つ屋根の下に、二人いることになった。
また、私の誕生日は、四月二十一日なのだが、克裕さんの妹の真奈美さんも、四月二十一日生まれなのである。
克裕とみどりの感性が合っているのも、二人の育った家庭環境が似ているからなのかもしれない。
克裕の父は元警察官で、警察をやめて商売を始めており、私の父も、元海上保安庁と海の警察で二十年勤めてから、運輸省の第五港湾建設局で、大型船の船長をやっていた。二人とも、真に真面目な人たちである。