死んだ英語教育の歴史

1 日本は英語が通じない国

4年前にルクセンブルグの知人が初来日し、その時の感想をメールで送ってくれました。「日本の文化と景観、人々の素晴らしさに感動しました。けれども、こんなに英語が通じない国だとは思いませんでした」と。

ルクセンブルグ語、フランス語、ドイツ語、英語が日常的に飛び交っている国から来た友人夫妻は、日本語しか話さない日本の人々に大変驚いたようです。これは彼らに限ったことではなく、日本を訪れた外国人は一様に、英語を話せる日本人が少ないことに驚きます。そして、すべての国民が6~8年間、学校で英語の授業を受けているのだと知ると、ますます不思議そうな顔をします。

日本人の英語の学習時間

日本人はいったい、どれくらいの時間を英語学習に費やしているのでしょうか。アンケートを取って調べてみました。

 

上に掲載したのは、公立中学校、公立高校を卒業して大学まで進学した20歳代の方々の、平均的な学習時間をグラフにしたものです。

長期休暇や祝祭日などを加味して中学校と高校は年間42週、1時限50分、大学は年間30週、1時限90分で計算すると、

〈中学校で〉週3時限(150分)×3年間(126週)=315時間

〈高校で〉週4時限(200分)×3年間(126週)=420時間

〈大学で〉週3時限(270分)×2年間(60週)=270時間

加えて私塾などで、

〈中学時〉週2時限(100分)×3年間(126週)=210時間

〈高校時〉週2時限(100分)×3年間(126週)=210時間

以上を合計すると1,425時間。真面目な生徒ならば、予習、復習の時間、および入試を含めてテストの準備に倍の時間はかけるでしょうから、その分を上乗せして2倍にすると、2,850時間になります。

小学校で英語に触れる時間があったと答えた人もいて、20代でも前半の人に多かったのですが、その回答内容を並べてみると、次のようになりました。

・週3回を1年間

・週1回を2年間

・月1回を3年間

・年3回を3年間

・年1回を1年間

このアンケートは、2012(平成24)年の春から秋にかけて回収したものですが、その10年前の2002(平成14)年からは、小学校の「総合的な学習の時間」が導入されているので、その頃小学校の高学年だった20代前半の方々は、ばらつきはありますが、導入当初から、この時間の活用によって、英語に触れる機会があったことがわかります。