【前回の記事を読む】「お金をかけない」で成功できる「トヨタ式」の子育て術とは?

第一章 子どもの地頭力を鍛えるためのトヨタ式

トヨタ自動車社長からの「異業種のトップからも、貪欲に学ぶべし!」との謙虚なメッセージがある。上司から、「今日の日経新聞の『私の履歴書』を読んだか?」と時折聞かれた。つまり世界は果てしなく広く、「針の穴から天を覗く」にならないための教訓と考える。

上場企業の社長のプロフィールに、学生時代に得意だった教科は? の問いに対して、「国語」との回答が目立つ。

自分の思考を整理できる・自分の考えを自分の言葉で人に伝えられる・人の思考が理解できる・相手の心理が読める・職場の真の問題点を抽出できる・氷山の下にある物事の本質を見極められる、すべて国語力と考える。

基礎学力である国語力は、コンピューターに置換してみると、OSに相当する。ベースとなるOSがしっかり機能していれば、さまざまなアプリケーションが稼働しやすい。行間を読み解く国語力は、正に人間力の土台を形成する。国語力を体得できれば、ありとあらゆる分野で、子どもの得意なスキルを発揮しやすい。そして、人間性のグレードアップが図られ、人生のパラダイムシフトにつながる。つまり、伸び代しろが、格段に異なる。

あとは親として、本人の興味が湧く分野に、環境を整えてあげることだけに専念すれば、なりゆきで良い方向に進む。伸ばしてあげようとしなくても、自らの力で、自然に枝葉がぐんぐん伸びゆくはずだ。国語力の体得は、子どもの成長にとって、必要不可欠である。つまり、知的好奇心の源泉である。

将来、スポーツ分野や芸術分野やほかのどの分野に進むにしろ、すべてのベースは国語力と考える。子どもの教育には、英語力・数学力よりも、まずは「国語力の体得が最優先!」と断言する。なぜなら、日本人の母国語は、日本語だからだ。

英語力も大切であるが、留学などで外国に放り込めば、短期間で体得できてしまう。のちに息子を海外留学させたが、その語学力アップの驚愕の成果からも断言できる。また会社において、数年間の海外勤務を命ぜられ、いくら語学力に乏しくても、あっという間にペラペラと自由に外国語を操っている同僚を目の当たりにした。よって、英語力は国語力の二の次でよい。必要に迫られれば、何とかなるものだ。

目先の英語の偏差値やTOEICのスコアにこだわる短期的思考でなく、心をきれいに磨き、潜在的な人間力のポテンシャルアップを狙いたい。学歴だけの東大止まりでなく、差別化を図れる圧倒的な何かを見いだしてあげたい。子どもは、小学生・中学生になるにつれて、親離れが進んでいく。家族旅行には行かなくなるし、外食にも仕方なくついてくる状況になる。両親と一緒の行動よりも、切磋琢磨する友達と集うほうが楽しいからだ。これは子どもの成長真っ只中まっただなかの証であり、当たり前の自然現象である。

一方で、幼少期の子どもは、うっとうしいくらい親にまとわりついてくる。なぜなら、頼れるのは親しかいないからだ。幼少の時期こそが、親が子どもに最も影響を与えられるゴールデン期間であると断言したい。つまり、この期間こそが最も重要な種まきの時期であり、決してあとにはずらせない。二度と戻ってこない千載一遇のラストチャンスであることを、心しておく。

トヨタでは、「巧遅より拙速」というキーフレーズがある。スピードが、付加価値を生む。正に「光陰矢の如し」であり、まずは「やってみる!」のスタンスで極力フットワークを軽くしておきたい。子どもの地頭力と人間力アップに向けて、幼少期よりスタートダッシュを図りたい。出遅れは、禁物である。