希代美の頬が薄紅色に染まっている。春樹はその頬を両手で包み込んだ。希代美の体が硬直する。希代美の若い桃のような頬に唇を当てる。唇をそのまま希代美の唇へと近づける。唇と唇が重なる。希代美がしがみついてきた。ほのかなアルコールの匂いの中に、若い女性特有のどこか甘酸っぱい匂いが沸き上がる。

春樹は今しか味わえない新鮮な匂いを求めて、唇を希代美の肌から離さないように首筋からまだ幼い乳房へと滑らせていく。希代美の口からくぐもった声が漏れる。しがみついていた腕の圧力がふいになくなった。春樹は優しく下半身に手を伸ばす。希代美はいつの間にか全裸になっていた。春樹が希代美の中へ入ってきた。希代美は処女だった。

交わりが終わった後、希代美の目を閉じたその顔には安堵の表情が浮かんでいた。希代美は生まれて初めて幸せを夢見た。希代美と春樹の交際が始まり、その1年後に二人は結婚した。しかし、結婚生活は始めから破綻した。春樹は結婚してすぐに、希代美に何の相談もなく勤めていた会社を退職した。

(一度目の結婚は失敗に終わった。でも、次の結婚では本当の幸せをつかんでみせる)

まずは光彦と淳美を別れさせなければいけない。光彦は淳美を愛していて、別れる気など毛頭ない。それならば淳美に離婚したくなる原因を作り出せばいい。それにはやはり男が一番手っ取り早い。希代美の頭の中にすぐに最適な人物が浮かび上がった。彼なら淳美をたぶらかすことなど朝飯前だろう。

希代美は仲谷春樹に電話をかけた。春樹は30万円の成功報酬で、あっさりと引き受けた。写真の女性、高沢淳美は女として最高の部類に属している。春樹が自ら進んででも誘惑したい女だった。そのうえ現金までもらえるとなれば、春樹に断るなどという選択肢はあり得なかった。希代美の指示を受け、春樹は陶芸教室に入った。淳美誘惑作戦の第一歩、春樹は淳美に声をかけた。