二 隕石の落下

やがて、テレビはニュースから歌番組に変わった。そのときである。窓の外が急に明るくなったかと思うと、ドーンという激しい地鳴りが部屋全体を揺るがした。二人は驚いて外へ飛び出そうとする。が、激しい揺れはそれだけだった。震度5ほどもある揺れが、数秒間部屋を揺らしたように感じられたがすぐに収まった。

窓の外はますます明るさを増して真昼のようである。そこで、テレビに緊急ニュースが流れた。

「番組途中ですが、ここで緊急ニュースをお伝えします。ただいま東北地方に隕石が落下したもようです。落ちた場所の特定はまだできていません。隕石は突然大気中に出現しましたが、大きさは直径五メートルほどの球形だと推定されます。隕石が大きいため、現場では被害が発生している可能性があります。落下したと思われる隕石を見かけても決して近付かないでください。また、近くに異変を感じた場合は、ただちに地元の警察か消防に通報するようにお願いします」

二人は、音と光は隕石が落ちたことによるものだと理解したが、動揺はすぐには収まらない。外は依然として真昼のように明るい。だが、音と揺れはその一度だけで、奥深い山には元の静寂が戻っている。そしてしばらくすると、いつのまにか明るさもなくなり、外はいつもの闇に包まれた。

「あの音と揺れは隕石だったのね。この近くに落ちたのね」

「そうみたいだな。音の大きさや揺れの強さもそうだが、近くでないとあんなに真昼のような明るさにはならないだろう」

「怖いわ、わたし。大丈夫かしら?」

「何がだよ」

「だって、外があんなに明るくなるなんて。それに長く続いたわ。山火事が起きたとか、山に何か異変が起きたんじゃないかしら」

「うちは一軒家だからね。隕石が落下して山火事にでもなったら大変だ。森に囲まれているしね」

「わたし怖い」

「でも、光はもうないだろ。外は真っ暗じゃないか。あれは山火事ではないさ」

「だと、いいですけど。でも、それならなぜ、あんなにも長く真昼のような明るさが続いたのかしら」

「実際にはそんなに長くはないと思うよ。数分だよ。五分もなかったと思うけどな」

「五分も真昼の明るさが続くなんて。隕石が落ちただけで? 変だわよ」

「まあ、そうだね。でも、そのあとはまったく静かだし、今のところ森に異変は感じられないな」

「ニュースではかなり大きい隕石だって言っていたわ。直径が五メートルもあるとか。そんなに大きい物がどうして前もって捕捉(ほそく)できなかったのかしら。隕石というよりも小惑星だわよ」

「以前にロシアで大きな隕石が落ちたことがあったけど、そのときも事前の捕捉はできなかったようだよ。ただ、そのときは大気圏に突入して大爆発したから、ものすごい衝撃波が広範囲で観測されたらしい。でもほとんどが燃え尽きて、地表に落下したのは破片だったけどね。ハヤブサが着陸したイトカワくらいの小惑星が地球に落ちたら、燃え尽きずにそれくらいの大きさに分解されて落ちてくるかもしれないね。

でも、ニュースでは、隕石は突然空中に出現したと言っていたな。五メートルもある隕石が、突如として空中に出現するってどういうことかな。変な話だな、いまどき……。隕石ではなかったのかな」

「まあ、あなた。隕石でないとしたら何が落ちたって言うの?」

「それは分からないさ。だからと言って、未確認飛行物体が落ちたなんてニュースで言ったら混乱するだろ。最近は使用済みの宇宙船が落下することもあるじゃないか。確認できない発光体の落下に注意を促すのが目的なら、とりあえずは隕石だと言っておく方が無難さ。特にNHKではね」

「ますます怖くなってきた」