【前回の記事を読む】地中のなかをどう診るの?知られざる「物理探査」の方法!

第一章 地球の診断

1-2 なぜ地下を診ることができるのか

ここでは、物理探査によりどのように地下を診ることができるのかについて説明します。そもそも、なぜ私たちの目は、地下が見えないのでしょうか。目は、物体から反射した光に反応して対象物を認識しています(図1─1)。

[図1-1]太陽光の反射、吸収。地表に達した太陽光は、一部反射し、また一部は地下に透過します。太陽光のような短い波長の波は、地下に透過すると吸収され急激に減衰します。 

人の目は太陽からの光が一番強い波長の光に反応するように進化してきたので、可視光といわれる波長が0.38~0.78マイクロメートルの範囲の光にしか感度がありません。この可視光の中で、目には波長に応じて赤や緑などの色として見えます(図1─2)。

[図1-2]波長による電磁波の名称と用途。人の目で見える光(可視光線)は、波長が0.38〜0.78μm(1μm=0.000001m)の範囲に限られ、その間の波長の違いにより紫~赤色に見えます。 可視光線はいろいろな波長をもつ電磁波の一部であり、電磁波は、波長に応じていろいろな用途に使われています。

このような非常に波長の短い光は、一部は地下に入りますが表面で急激に減衰して消えてしまいますし、大半は地表にある土やコンクリートの表面で反射してしまいます。そのため目では地下が見えないのです。では、地下深い所を診るためにはどうしたらいいのでしょうか。

その一つの答えは、光よりも波長の長い電磁波を使えばよいということです。このような電磁波は深部まであまり減衰しないで到達するので、地下を診ることができます。電磁波とは何か、と問われると見えない現象なのでイメージが湧きにくいのですが、たとえば、地球上のような重力が働く場所で、水面の波が高くなったり低くなったりして伝わる波の様子を思い出してください。