聞いている私の中では、恥じや怒り、誇りや満足、哀しみと寂しさ、そんな感情が、浮かんでは消える。
はっきりしてきたのは、この人はこうと決めたら並々ならぬ意志の強さでやり遂げようとする人らしいということである。このような強さは、脆さと同居していることが多い。また、怒りがこの人の原動力であるような印象が強くなってきたが、その底には限りない優しさが潜んでいるようにも感じられた。
高校に入って、彼女に転機が訪れたようだった。進学校という環境は彼女に幸いした。勉強することが価値がある環境で、彼女は水を得た魚のようにのびのびと学業に打ち込み、それが周囲から認められる体験となった。自分に自信を深めた彼女は、自分のこの状態を何とかしようと思う気持ちを募らせていった。
思春期から青年期にかけてわれわれは、意味もなく絶望するし些細なことで希望を芽生えさせる。先がどうなっていくのか見通せない中で、変わりたい、成長しようとする心は、極端に揺れ動く。その中で、これをやっていれば何とかなるかもしれないと思えたことは、大変大きな力となったであろう。
この道がどこに続いていくかはわからない。しかし夢中でそれにのめりこむしか、この人には道がなかったのだろう。そしてそれに打ち込むことができるだけの健康な力を、この人は宿していたのだ。カウンセリングもうまくいくのではないか。私の中で少しずつ進んでいく方向のイメージがふくらみ始めた。