真理に限定せず、異性とのつき合いということでは、葛城と来栖には既に過去に多少のいきさつがあった。葛城とは高校に通っていた頃に知り合い、二年次からは同じクラスで住まいも互いにそう離れてはいない所に住んでいたので、卒業するまでの二年間は通学するのも、放課後の遊びや勉強でも共にすることが多かった。

大学に入ってからは別々の大学に通うようになった二人は徐々に疎遠になっていったのだが、同じ高校の二年間では二人にとって互いに親密そのものというつき合いで過ごした時期もあった。

男女のつき合いでいえば、その頃の来栖はどちらかというと奥手で、葛城のほうは当時すでに同じクラスの女の子や他校の女子高生もガールフレンドにしたこともあったようで、この方面では青春を謳歌していた。彼は友情の証しをはっきりと見せたかったのだろう。

ガールフレンドもいないし、ひっ込み思案で、葛城とのつき合い以外では友も作らず、次第にオタクめいた生活をするようになっていた来栖に時々女の子を紹介しようとした。「自分たちはカップルで、お前のほうが一人でいるとせっかく親密になった俺たちのつき合いがやりにくくなるから四人でのつき合いをめざそう!」というのが、紹介してくる理由づけだった。

葛城のプランは結局功を奏さず、来栖はオタクのままで、親密になった女の子など一人もできないままに高校生活を終えてしまった。

他方、葛城のほうは三年次から卒業まで結構女の子とのつき合いをさらに発展させていったようだった。結局この点に関してだけは、二人の高校生活は全く異なる形で終わった。学生時代に入ると二人の関係は自然に消滅していったも同然だったが、大学卒業後社会人になると再開した。

来栖は広告代理店で働き始め、葛城のほうは卒業と同時に東京都庁に職を得、都の区役所を渡り歩く形で一貫して公務員として働いていた。来栖のほうは広告代理店には五年間勤めたが、後半の二年間は海外のSF小説の下訳を引き受けたり、マスコミ業界誌の記者を週末だけ引き受けるなど、アルバイトをこなして安い給与を補てんしていた。

あとから思うに営業に回されての本業の仕事よりも、自分の考えをまとめて文章にできるような仕事のほうに面白みを感じるようになっていたのだ。大学を卒業してからおよそ五年後に都区役所の職員に転じることができたのも、中途採用の情報を提供してくれた葛城のおかげだった。

一年の試用期間を経て彼は本採用の正規職員になれたが、その時から二人は区役所職員として、そして地方公務員の職階からいえば同年齢の上司と部下という身分関係で働くことになった。大学卒業後つき合いが再び始まるについては、このような事情があった。