先に栄美華と店で待っていると憔悴しきった恵が現れた。

「痩せたね」

というよりやつれている。

「二人はどうしたの? 渋谷に来るなんて珍しい」

「何があったの? 学校にも来ないし」

栄美華の顔は険しかった。

「私たち恵に会いに来たんだよ」

頼んだレモンスカッシュをゆっくり飲むと、一呼吸おいてゆっくりと恵が話した。

「わたしって友達少ないから彼氏とばっかりいるし、彼氏がいない時は彼女持ちって分かってても手を出して寝取ってたんだよ。それって男が決める事でしょ? わたしは悪くないと思ってたんだけど、寝取られた女の子達が一致団結してクラブで噂を広めて、そしたら大輔にも追い出されちゃって。

行く場所失って家に戻ったら両親と妹が楽しそうにテレビ観てたのね、ただいまっていうとお母さんはこっちに気づいたんだけど無視されちゃって。お父さんと妹はわたしが後ろに立ってることすら気がつかないの。誰にも相談できないままお腹だけが大きくなって」

恵はもう一度レモンスカッシュを一口飲んだ。

「なんでわたしなのって、世の中不公平だなって泣きまくった。それから」

恵は続けた。中学生の頃、義理の母親が不倫していた時のことを詳しく話してくれた。父親が単身赴任で家をあけている間、何度も不倫相手を家に招き入れていたそうだ。

それに気づいたのは、あるとき恵が熱を出して家で寝込んでいると、母親と男の声がリビングの方から聞こえてきた。ぼんやりした意識のなか恵は父親が帰ってきたと思い、声の聞こえる方へ向かった。それは父親ではなく見知らぬ男であった。男が恵に向けた眼光に、恐怖を感じてすぐに部屋に戻った恵が何も言い出さないのをいい事に、男は時間を気にせず家に上がり込むようになる。

母親からは親戚の叔父さんとだけ伝えられたが、恵には不倫相手だと分かった。男は恵を舐めまわすように見ていた。その視線に恵は不快感を感じ、なるべく会わないように部屋に籠った。