シリアの国境までの七キロメートルが気が遠くなるほど長く感じられる。それでも十分ほど走ってシリアの入国審査所に着いたときは、さすがにホッとした。シリアの三日間のトランジットビザをもらい、アレッポに向かう。しかし、路線バスはなく、タクシーしかないという。五シリアポンド(三百二十五円)とのことで、もったいないのでヒッチすることにする。

冷たい風の中で待っていると十五分くらいで小型トラックが止まってくれて荷台へ。荷台には幌がついているのでそんなに寒くない。アレッポへの途中のアタレブという町が、ヒッチしたおっさんの家がある町で、家で休憩してからアレッポに行くという。一緒にお茶を飲んでいこうと誘われ、急ぐ旅ではないので、おっさんの家についていく。

屋敷内の陽だまりの中庭に若い女性が椅子を運んできてくれる。しばらくしてから、奥さんらしい女性がお茶を運んできたが、すぐ引っ込む。ここ、アラブ社会では成年の女性は男性とは同席せず、人前にもあまり出てこない。人前に出なければならない日常の買物も男性の仕事である。

そのうち、この町に住み、アレッポの大学に通っているという青年Vがやってきて一緒にお茶を飲む。Vは少し英語を話す。話しているうちに、今夜Vの家に泊まれと言う。断る理由がないので了承する。しかし、Vはこれから大学に行くので、四時ごろまた会おうといって別れる。そこで、ヒッチさせてくれたおっさんにヒッチとお茶のお礼を言って外に出る。

とたんに子供たちに囲まれる。そして、子供たちが一斉に話しかけてくるが、アラビア語なので何を言っているのか全然わからない。その時、子供たちの先生がやってくる。その先生は英語は少しわかる。時刻はもう昼を過ぎており、朝食も摂っていなかったのでどこかに食堂はないかと尋ねる。すると、ここは小さな村だから食堂はないが、食べ物を売っている店があるという。教えられた店に行くのに、前に後ろに三十人くらいの子供たちがゾロゾロついてきてどうしようもなくなってきた。