【前回の記事を読む】その時だけを繕えばいいという日本政治…国民の反映でもある?

政治的……

政治は「主権者が司法・行政・立法の各機関を通じて国を治め、運営していくこと」(『明鏡国語辞典』)である。これはお行儀のよい典型的な定義であるが、ここでは「あの人には政治力がある」とか「彼は政治的に立ち回るので注意したほうがいい」のように用いられる政治力や政治的行動の意味を考えてみたい。

そのような意味の「政治」はどうも政治家先生の専売特許ではないらしい。人が何人か集まれば「政治的」行動が発生するというから、政治は嫌いだという人でも、そのような「政治」に巻き込まれざるを得ないのが人間の集団らしい。

ところで政治的行動とは「組織の公式な役割の一部として要求されるものではないが、組織内の利益と不利益の配分に影響するか、あるいは影響しようとする行動である」(S・P・ロビンズ)という。

従って、これは意思決定をするものに重要な情報を流さないとか、内部告発をするとか、苦情を表明するとか、うわさを流すとか、組織活動に関する秘密情報をメディアに漏らすとか、相互利益のために他者と取引するとか、利益と不利益の配分に関して議員などに働きかけるとかの非常に広い概念である。

具体例として、まず身近なところから述べる。大学には名誉教授という称号があり、教授歴二〇年以上のものに授与されることが多い。○○大学××学部教授に○○大学名誉教授という称号が授与される。称号授与のための費用はほんのわずかで済む。

会社に勤めていた友人から「定年後に名刺が使えなくなって不便だ」という話を聞くことがあるが、その意味では名誉教授は名刺に書けるありがたい称号である。終身使えるので退職後の活動で利用できるし、社会的活動でこの称号を使えば大学のPRにもなるから教員と大学の双方にメリットのある制度である。

もちろん名誉教授の称号は不名誉な事件など起こすと当然のことながら剥奪される。また二〇年以下の教授歴でも大学への貢献度や学会活動あるいは社会的活動などを勘案して名誉教授の称号が授与されることもある。このように二〇年以下で名誉教授が授与される場合には、判断基準に幅があるので政治的な意思決定の余地が出てくるかもしれない。