【前回の記事を読む】移動手段は自動車ではなく馬車。モロッコで見た成長の遅れ…
米ドルへの換金を強制するエジプト
ギリシャ(アテネ)→エジプト(カイロ)一九七四年一月五日
アテネ空港を飛び立った飛行機は定刻を少し遅れてカイロ空港に到着。空港での入国審査で、予想通りビザ発給のために空港内の銀行で八十米ドルをエジプトポンドに交換してこいと係官から言われる。そこで、こちらは貧乏旅行なので一週間程度のエジプト滞在では八十米ドルは使い切れない。
学生なのだからエジプトポンドへの換金金額を半分の四十米ドルにまけてくれと交渉を開始する。しかし、このことは国で決めたことなのだから、入国審査官が勝手に変更することはできないと言われる。そこを何とかお願いしたいと交渉を続けたが、ついに八十米ドルをエジプトポンドに換金できないのなら、ビザは発給できないのでこのカイロ空港からギリシャに帰れと言い出す。
それでもこちらが聞き入れないので、ついに入国審査官は向こうにいる上司に頼めと言う。
その上司の所に行って、改めて四十、五十米ドルにまけてくれと頼む。一時間あまりねばったが駄目。そのうちアテネから乗ってきたスイス航空の職員がこちらの荷物が引き取られないで残っているので心配してきてくれる。彼もエジプトの係官に掛け合ってくれるけど駄目。
ところで、八十米ドルをエジプトポンドに交換するのをそんなに嫌がるのは、次のような理由による。
①交換したエジプトポンドのうち、使いきれないで余ったエジプトポンドは米ドルに再チェンジできない。
エジプト滞在が六日以上の場合には、交換したエジプトポンドのうち使い残した分は米ドルに再チェンジできない。このことは、一日に十三米ドル(八十米ドル÷六日)を使わなければならないことを意味する。しかし、貧乏旅行の私にはとても使いきれない。
②公定レートと旅行者用レートには一・五倍の差がある。
エジプトポンドの交換レートには二種類あって、公定レートに比べてエジプト国内での旅行者用レートは一・五倍の差があるので、公定レートでの換金はなるべく少なくしたい。
・公定レート:一・〇米ドル=E・P(エジプト・ポンド)〇・三七八
・旅行者用レート:一・〇米ドル=E・P(エジプト・ポンド)〇・五八一
ただし、国際航空券をエジプト国内で購入する場合には、公定レートで交換したエジプトポンドで、かつ銀行の換金証明書を添付する必要がある。このため、国際航空券相当額の公定レートによる換金は必要となる。