そうしてどれくらいのときが過ぎたでしょう。ひとしずくは相変わらず葉の縁にたれ下がり、辛抱強く耐え忍んでいました。けれども、もう見るからにぐったりと疲れ果てていました。葉にしがみつき続けるのは、もはや限界でした。ひとしずくが己を引き上げるささやかな微力と、地底に引きずり込むような畏れ高い重力との勝負は、とっくに決着がついていました。風でも吹けば、あとはあっけないものでしょう。ひとしずくは自分を強い…
[連載]ひとしずく
-
小説『ひとしずく』【最終回】今明 さみどり
「目をひらいているほうが、こわくない!」怖がって閉じていた目をあけた先にあったのは…
-
小説『ひとしずく』【第6回】今明 さみどり
【小説】「時間の尺度というのは誰にでも公平ではないのです」
-
小説『ひとしずく』【第5回】今明 さみどり
サヨナラってぼくに?また今度って誰へ?「サヨナラ」と「また今度」の続きなんて本当にあるの…
-
小説『ひとしずく』【第4回】今明 さみどり
水の滴の姿で旅立っていく兄弟たち…ころころと笑うような別れのあいさつ
-
小説『ひとしずく』【第3回】今明 さみどり
空気の振動よりずっと小さな声で…緑児のように他愛ないつぶやき
-
小説『ひとしずく』【第2回】今明 さみどり
【小説】生命が芽吹く森…「何千種もの緑色が一度にこぼるるこのときを、何と表現すればいいのでしょう」
-
小説『ひとしずく』【新連載】今明 さみどり
【小説】まだ誰も出会ったことがない“ひとしずく”の物語