こうして僕はタクシーというものに初めて乗った。まるで連行される犯罪者のように気まずかっただろう。しかし、僕の記憶にはウキウキした感情だけが残っている。駐在さんの顔は覚えていない。真っ暗な空。表通りは家路を急ぐ車のヘッドライトで眩しかった。この小学生は「メロンパンありがとう」と、駐在さんに礼の一言も言えなかっただろうなあ。迎えの母と駐在所を出た、まさにそのときの風景が、強烈に僕の網膜に焼きついてい…
[連載]マイ・スウィート・ロード
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