その日を境に、思考力も理解力もなくして錯乱状態に陥った美子に、双方の両親は、ただ戸惑うばかりで、この境地から抜け出させる手段は見付からず、本人より心を痛めていた。その一方、「わたしが歌会に出た、あの日、僕はひとりでスケッチに出掛けるといった彼を引き留めれば良かったのか。今日は家で描いていてと、言えばよかったのか。わたしと一緖に来週行こうと言えばよかったのか……」と、後悔とも迷いともつかない言葉が…
[連載]片羽の鳥
-
小説『片羽の鳥』【最終回】橋本 みい子
塞ぎ込んでしまう日々に…「歌を詠まなければ」と決意したワケ
-
小説『片羽の鳥』【第9回】橋本 みい子
「こんなにも幸せ」な夫婦生活が一変…夫は永遠に還らぬ人に
-
小説『片羽の鳥』【第7回】橋本 みい子
「わたしと結婚する人は誰であれ、当人よりも家族の反対があるはずだ」
-
小説『片羽の鳥』【第6回】橋本 みい子
【小説】「わたしはこの人に会うために、此処に来たのだった」
-
小説『片羽の鳥』【第5回】橋本 みい子
「全てが、あの日の光景と同じような気がする」無意識に導かれるまま、海へ
-
小説『片羽の鳥』【第4回】橋本 みい子
【小説】「わたしは何時も一本しか買わない。でも、今日は…」
-
小説『片羽の鳥』【第3回】橋本 みい子
短歌の材料を見つけても決して「メモを取らない」彼女のこだわりとは
-
小説『片羽の鳥』【第2回】橋本 みい子
【小説】「この偶然はなに?」電車に乗った女性が動揺したワケ
-
小説『片羽の鳥』【新連載】橋本 みい子
【小説】車窓からの類希な美しい光景に「彼女は三十一字を閃いた」